DAVID BOWIE/THE SOUL TOUR 74(デビッド・ボウイ/ソウル・ツアー74) Vinyl Diary
『THE SOUL TOUR 74』ヤセこけたガラガラ声のボウイ、だけどクオリティは落ちず、文字通りソウルフルな快作。公式には初のリリースとなる、’74年のソウル・ツアー(フィリー・ドッグ・ショー) 2020年リリース
David Bowieデヴィッド・ボウイ(本名:デヴィッド・ロバート・ジョーンズ 1947年1月8日ー2016年1月10日)
スタジオ・アルバム・ディスコグラフィー
『DAVID BOWIE』(1967 6/1)
『SPACE ODDITY』(1969 11/4)
『THE MAN WHO SOLD THE WORLD』 (1970 11/4)
『HUNKY DORY』(1971 12/17)
『ZIGGY STARDUST』(1972 6/16)
『ALADDIN SANE』(1973 4/13 )
『PIN UPS』(1973 10/19)
『DIAMOND DOGS』(1974 4/24)
『YOUNG AMERICANS」(1975 3/7)
『STATION TO STATION』(1976 1/23 )
『LOW』(1977 1/14)
『HEROES』(1977 10/14)
『LODGER』(1979 5/18)
『SCARY MONSTERS』(1980 9/12)
「LET’S DANCE』(1983 4/14)
『TONIGHT』(1984 9/1)
『NEVER LET ME DOWN』(1987 4/27)
『TIN MACHINE』(1989 5/22)
『TIN MACHINE Ⅱ』(1991 9/2 )
『BLACK TIE WHITE NOISE』(1993 4/5)
『OUTSIDE』(1995 9/26)
『EARTHLING』(1997 1/30)
『HOURS』(1999 10/4 )
『HEATHEN』(2002 6/11 )
『REALITY」(2003 9/16)
『THE NEXT DAY』(2013 3/13)
『BLACKSTAR』(2016 1/8 )
『THE SOUL TOUR 74』(2020 8/29)
『TOY』(2021 11/26)
『THE SOUL TOUR 74』
Track List
A1.Introduction – Memory Of A Free Festival 、2.Rebel Rebel 、3.John, I’m Only Dancing (Again) 、4.Sorrow 、5.Changes 6.1984
B1.Moonage Daydream 、2.Rock ‘N’ Roll With Me 、3.Love Me Do / The Jean Genie 、4.Young Americans
C1.Can You Hear Me 、2.It’s Gonna Be Me 、3.Somebody Up There Likes Me 、4.Suffragette City
D1.Rock ‘N’ Roll Suicide 、2.Panic In Detroit 、3.Knock On Wood 、4.Foot Stompin’ / I Wish I Could Shimmy Like My Sister Kate / Foot Stompin’ 、5.Diamond Dogs / It’s Only Rock ‘N’ Roll (But I Like It) / Diamond Dogs
Personnel
David Bowie – vocals, 12-string acoustic guitar, harmonica、 Earl Slick – guitar、 Carlos Alomar – guitar、 Mike Garson – piano, Mellotron、 David Sanborn – alto saxophone, flute、 Pablo Rosario – percussion、 Emir Ksasan – bass、 Dennis Davis – drums、 Warren Peace – backing vocals、 Anthony Hinton – backing vocals、 Luther Vandross – backing vocals、 Ava Cherry – backing vocals、 Robin Clark – backing vocals、 Diane Sumler – backing vocals
アルバム『DIAMOND DOGS』を完成させその名前を冠したツアーが74年6月にスタート。だが、このツアーがボウイにとってあまり満足のいくものではなく、一部のメンバー・チェンジなど内容を一新し再開したのがソウル・ツアー。『DIAMOND DOGS TOUR』と並行して新作「YOUNG AMERICANS」のレコーディングも行われており、ロックンロールよりも気分は完全にソウル・マンだったことが想像される。『DIAMOND DOGS TOUR』前にアルバムの宣伝のため、渡米した際は度々ニューヨーク・ハーレムのアポロ・シアターにスタッフを連れて赴き、夜毎存分に踊り明かした。また、何処に行っても騒がれない(アメリカでの認知度がそう高くない)ことで、心おきなく楽しめることにとても気を良くしたらしい。全編厚みのあるバック・コーラス、ホーン、パーカッシブな音が増え、ファンキーでエモーショナル。ザ・ソウル・レビューといった印象。
A1.Introduction – Memory Of A Free Festival
アナウンスに続いてボウイ登場。
2.Rebel Rebel
ギター・リフはオリジナル・ヴァージョンのままだが、大胆な女性コーラス、16ビートのパーカッション、デビッド・サンボーンのサックスが加わりファンキーな演奏。ボウイの声がかなり枯れて乾いた感じだが、調子は悪くないのではなかろうか。
3.John, I’m Only Dancing (Again)
オリジナルとかなり異なり、アッパーな16ビートに変化。女性コーラスとのハモりが緻密にアレンジされていることから、思いつきなどではなく、このアレンジでしっかりリハしてることが分かる。尺も長く、全員でグルーブを楽しんでいる雰囲気。
4.Sorrow
表向き、メロウな感じはそのままに、裏ではかすかに16ビートを感じさせる仕上がり。エミール・カサンのベースが。このイメージを決定付けているか。この頃、いかにボウイがソウルを嗜好していたかが窺える。
5、Changes
ジャジーな歌い出しからこれもファンキー路線に。マイク・ガーソンのピアノが実に良い。高音で歌う箇所は少し辛そうで、低めにアレンジして歌っているが、そこは流石ボウイで、表現力や凄みで充分にカバーしている。
6.1984
この曲は元々16ビートだからか、このバンドにハマっている。オリジナルほどの緊張感は無いが、コーラスによる厚みで新たな顔を見せた感じ。アフリカンなパーカッションも合っている。
B1.Moonage Daydream
テンポが少し遅めになり、より歌を聴かせるアレンジになっている。ギターは控えめでコーラス、サックスがボウイの歌と絡む、ドラマティックな展開はそのままに、極上のソウル・ミュージックに生まれ変わった印象。
2、Rock ‘N’ Roll With Me
ボウイの歌とピアノ、サックスでジャジーなイントロから始まり、感動的なバラードに。声が辛そうだが、表現力で上手くカバーしている。
3.Love Me Do / The Jean Genie
ファン・サービスかビートルズのラブ・ミー・ドゥをワン・コーラス歌った後、トーキング・ブルース風に始まるジーン・ジニー。アーシーな感覚が、とにかくむちゃくちゃカッコいい。この曲もハードなブルース・ナンバーから、かなり形を変えて驚きのトラックに生まれ変わっている。達者なハープはボウイ自身のようだ。素晴らしい。
4.Young Americans
ここで早くも登場となる同曲、この編成でハマらないはずがない。アルバム・ヴァージョンよりもガーソンのピアノが前に出ており、音のタッチが優しい印象。
C1.Can You Hear Me
落ち着いたトーンのソウル・ミュージックといった雰囲気か、ボウイの、ソウルフルで説得力のある歌声が楽しめる。バックの抑えた、控えめな演奏も好感が持てる。
2.It’s Gonna Be Me
C1に続き、この曲もシンガー、ボウイの歌唱力が存分に味わえる。寄り添うようなガーソンのピアノが秀逸。サンボーンの泣きのサックスもボウイの歌を上手くバックアップしている。アレンジもドラマティックで、非常に聴かせる1曲に仕上がっている。
3.Somebody Up There Likes Me
イントロ、サンボーンの気持ち良さそうなサックス・ソロから始まる。柔らかい音のカルロス・アロマーのギターがサックスと絡み、極上の空間を作っている。最後までボウイは情熱的にソウルフルに歌い上げる。
C-4、Suffragette City
相変わらずカッコイイ曲だ。コロコロと転がるようなガーソンのピアノが実に良い味を出しており、女性コーラスとボウイのハモりで、オリジナルとは一味違った楽しそうなファンキーなロックンロールに仕上がっている。
D-1、Rock ‘N’ Roll Suicide
ジャジーなピアノでの歌い出しがSo Cool!原曲よりもテンポが遅く、歌心あふれるR&Bに仕上がっていて感動的だ。この曲でもガーソンは大活躍で、美しいピアノを披露している。サンボーンもロング・トーンのサックスでこの曲に華を添えている。
2.Panic In Detroit
バンドの編成が変わると音もここまで変わるのかという好例である。この曲ではここまで意外と地味だったアール・スリックのハードなギターが活躍している。音作りがミック・ロンソンのそれと似ている。
3.Knock On Wood
この曲では一転、カルロス・アロマーのファンキーなギターが前面に出ている。ガーソンだろうか、クラビっぽいスタッカートの音の鍵盤がハマってファンキー度を上げている。
4.Foot Stompin’ / I Wish I Could Shimmy Like My Sister Kate / Foot Stompin’
アロマーとスリックの2本のギターが上手く絡み合っている。ブリッジで緩急を付けて飽きさせないアレンジにしているところはさすがボウイ。喉の調子を気にすることなく絶唱するボウイの気迫が凄まじい。
5.Diamond Dogs / It’s Only Rock ‘N’ Roll (But I Like It) / Diamond Dogs
ダイアモンド・ドッグズはギターが控えめだが概ねオリジナル通り。ビートルズの次はローリング・ストーンズのイッツ・オンリー・ロックンロールを挟む遊び心がナイス!
アルバム中、1番オリジナルとの変化が顕著なのはA-3、John, I’m Only Dancing ではないだろうか?原曲のシャッフル調のノリが完全に16ビートに変わって違う曲のように聴こえる。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。