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THE STREET SLIDERS/夢遊病(ザ・ストリート・スライダース/ムユウビョウ)

『夢遊病』

『夢遊病』は1985年にリリースされたストリート・スライダース通算4枚目のスタジオ・アルバム。レコーディングはロンドンで行われ、初のダビング方式で録音された。

 

THE STREET SLIDERS

村越(HARRY)弘明(ボーカル・ギター)、土屋(蘭丸)公平(ギター・ボーカル)、市川(JAMES)洋二(ベース・ボーカル)、鈴木(ZUZU)将雄 (ドラムス)

1980年結成。

1983年にEPIC・ソニーからレコード・デビュー。

1983年3月  SLIDER JOINT

1983年12月 がんじがらめ

1984年11月 JAG OUT

1985年7月  夢遊病

1986年11月 天使たち

1987年10月 BAD INFLUENCE

1989年1月   SCREW DRIVER

1990年12月  NASTY CHILDREN

1995年4月  WRECKAGE

1996年11月  NO BIG DEAL

(ライブ、ベスト盤は割愛)

2000年に解散。

スライダーズデビュー40周年:2023年1月23日、豪華トリビュート盤とオリジナル音源の2枚組発売の告知。

The Street Sliders Hello!!(日本武道館公演):2023年5月3日に東京の日本武道館で「The Street Sliders Hello!!」ライブが行われ、解散後22年と半年振りにメンバー4人がステージに再集結。バックステージ開放席、立ち見席も含めた約1万4千人分のチケットは全て完売した。終演後、秋に全国ツアー『ROCK’N ROLL』を行うと発表。WOWOWより日本武道館からライブの独占生中継及びストリーミング配信も行われた。

『夢遊病』

SIDE A 1.Baby.I’m Really Down、2.パラダイス、3.7th Ave Rock、4.TIME IS EVERYTHING TO ME、5.NEW DANCE

SIDE B 1.今はこれでいいさ、2.Let’s go down the street、3.I DON’T KNOW、4.天国列車、5.tsumuji-kaze

SIDE A

A1.Baby.I’m Really Down

タイトルとは相反してアッパーでソリッドなロッキン・チューン。本作ではこれまでの一発録りをやめてリズム・トラックから重ねて録音していく方法を採用したようで、それが功を奏したのか、ハリーと蘭丸のギターがぶつからずキレイに分離してとてもバランスが良い。安定したリズム・セクションは言わずもがなである。蘭丸のリフは職人的、ハリーが気負わず歌っている感じがとても良い。

2.パラダイス

横ノリのロックンロール。2本のギターの絡み、コーラス・ワークも実に丁寧。小技の効いたズズのハイハットがとても活きている。キレのあるハリーのギターに呼応する蘭丸の粘り着くようなスライド・ギターがこの曲を奥深いものにしている。ルーズなロックンロールのフォーマットなのに何故か洗練されて聴こえるのが不思議だ。

3.7th Ave Rock

3コードの、しかも何の装飾音も無い4人だけの、極々シンプルな8ビート。しかもギター・ソロのオーバーダブさえされていない!力量が無ければ出来ない芸当である。軽くセッションしてます、って感じの演奏なのに、こんなに聴かせる曲に仕上げられるのは、凄いとしか言いようがない。

4.TIME IS EVERYTHING TO ME

歌にフィットしたハリーの抑揚の効いたギターと、蘭丸のギターが有機的に絡む。本作ではハリーのヴォーカルに深めにリバーブがかけてあるようだが、それが上手く機能している。また、このアルバムではハリーの詞作にも変化があったような気がする。以前よりも内省的と言おうか、心象表現が増え、より深みを増した感があり、この曲などは特にそれが顕著な曲であると思う。それに合わせてか、ハリーのヴォーカルはこれまでのアルバムに比べて、敢えてトーンを抑え気味にしている感じがあり、それも成功していると思う。名曲である。ギター・ソロはハリーか。

5.NEW DANCE

シングル・カットされた曲。3コードの曲が多いバンドだが、この曲はポップな印象もあり、メロディアスで、これまでのスライダースには無かったタイプの曲だと思う。4人の演奏がベースだが、装飾的にピアノが入っている。派手に弾きすぎない、やや抑え気味の蘭丸のギターが味わい深い。

SIDE B

1.今はこれでいいさ

ビートルズを彷彿させるイントロ。刻まない、ロング・トーンのギターが気持ち良い。裏であまり大きくない音でスライド・ギターも使用されているようだ。ハリーのヴォーカルも優しい感じがする。フェンダー系のギター好きにはたまらない曲だと思う。

2.Let’s go down the street

このアルバムは、派手さはあまり無いものの名曲オンパレードの優れた作品だと思っているのだけど、その中でもこれは白眉と言いたい1曲である。ザクザクと進む蘭丸のギター、重く正確なジェームスのベース、ここでも技を見せるズズのスティック・ワーク、そしてハリーの描く詞世界の具現化が見事に形に表されたナンバー。パーカッションの使用も絶大な効果を生んでいる。何度聴いてもこのグルーブに魅せられてしまう。

3.I DON’T KNOW

一転して明るいタッチの、ズズの変則的なドラム(TICKET TO RIDE?)がビートルズ・ライクな、クセになる1曲。ここでもハリーと蘭丸のコーラス・ワークが光る。2本のギターのせめぎ合いも印象的である。AメロBメロともにとてもシンプルな曲だが、聴き流すことを許さない吸引力がある。

4.天国列車

蘭丸がリード・ヴォーカル、割と明るくシンプルで、サラッと聴ける1曲。蘭丸に寄り添うハリーのコーラスが良い。かつて、スライダースのライブには複数回行っており、コンサート会場でこの曲を聴いた時は、いたく感動した覚えがある。サビのサイケデリックなギターはハリーだろうか、何とも言えずカッコいい。

5.tsumuji-kaze

アルバム・ラストのストレートなロックンロール。左のチャンネルからハリーのギター、右から蘭丸のギターが時に分離し、時に有機的に絡み合いながら進行していく。

各楽器の音色とバランス、曲のクオリティ、全体の整合感、音と詞が織りなす世界観、全てが充実した5つ星の快作である。

 

ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。  またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ他)絵画に興味ある方はご覧ください。

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