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KEITH RICHARDS/CROSSEYED HEART(キース・リチャーズ/クロスアイド・ハート)

『CROSSEYED HEART』  

『CROSSEYED HEART』  は2015年にリリースされたキース・リチャーズの3rdソロ・アルバムである。

The X-Pensive Winos

Keith Richards – lead vocals, acoustic guitar, bass , electric guitar, piano, backing vocals, keyboards, electric sitar, Wurlitzer , Farfisa , tiple 、 Waddy Wachtel – electric guitar , acoustic guitar , backing vocals , slide guitar 、 Steve Jordan – drums , backing vocals , percussion , piano , congas  vibes , timpani , horn arrangement 、 Bobby Keys – saxophone 、 Ivan Neville – Hammond organ , backing vocals , wurlitzer 、 Babi Floyd – backup vocals 、 Sarah Dash – backing vocals

Track List

 1. Crosseyed Heart 、 2. Heartstopper  、3. Amnesia 、4. Robbed Blind  、5. Trouble 、6. Love Overdue 、7. Nothing On Me 、8. Suspicious 、9. Blues In The Morning、 10. Something For Nothing、11. Illusion 、12. Just A Gift 、13. Goodnight Irene、  14. Substantial Damage 、15. Lovers Plea 

 

1stスタジオ・アルバム『TALK IS CHEAP』1988年にリリースした後、キースのバンド“Xペンシブ・ワイノウズは全米13ヶ所をツアー、その後ストーンズは『STEEL WHEELS』をリリースしそれに合わせたワールド・ツアーを敢行。そのツアーがひと段落した段階で、キースは再びX-PENSIVE WINOSのメンバーを集め、そして1992年にリリースされたのが2作目のスタジオ・アルバム『MAIN OFFENDER』である。それからなんと23年という歳月を経てリリースされたのが『CROSSEYED HEART』である。 

レコーディングしたくて堪らないものの、X-PENSIVE WINOSのメンバーはそれぞれ多忙でつかまらないため、とりあえず先にスティーブ・ジョーダンと2人、リズム・トラックだけ録ってみよう、というのがこのアルバムの始まりだったようだ。最初から着地点も締切も無い状態で楽しんで作業出来たのだという。足掛け34年かけての製作である。

上記のような事情のため、本作でのリチャーズはヴォーカルはもちろん、ギター以外にも様々な楽器を担当、ベースに至っては全15曲中10曲でその腕前を披露している。当然スティーブ・ジョーダンも大活躍である。X-PENSIVE WINOSは、メンバー全てが一度に揃う機会には残念ながら恵まれなかったそうだが、今回もキースをしっかり支えている。収録曲のうち、3曲はカバー。ノラ・ジョーンズの参加も話題になった。

アメリカでは11位を記録、全英アルバムチャートでは最高7位を記録し、ソロ名義では初の全英トップ10アルバムとなった。オーストリアのアルバム・チャートでは初登場1位の快挙だった。

 

 1. Crosseyed Heart

ブルース愛溢れるオープニング・ナンバー。なんと弾き語りのアコースティック・ブルースである。1stの「BIG ENOUGH」、2ndの「999」、この2曲のオープニングにも大変驚いたが、今回も意表を突くスタートである。ロバート・ジョンソンにリスペクトを込めたナンバーだそうだ。

 

 2. Heartstopper  

結構早いテンポの8ビート。左チャンネルから聴こえるフィルター・トロンのようなギターのコードがロカビリーっぽく響く、ストレートなロックンロール。ソロのペダル・スティールはラリー・キャンベル。キュートなピアノ・リフはキースによるもの。Aメロの低音ボイス、Bメロのダブル・トラックのヴォーカルが超クール。

 

3. Amnesia

アムネシアとは記憶喪失とか健忘症の意。ギターが3〜4本重ねてあるが、どれも抑えた音で、キースも敢えて淡々と歌ってる感じがあり、それが実にスリリングな演奏。前作、全前作には無かったアプローチだと思う。サックスはボビー・キーズ。キーズはこのアルバムが発売される前の年、201412月に他界。スキャットはスティーブ・ジョーダンの奥方のミーガン・ヴォス。

 

4. Robbed Blind   

アコースティックのバラード。大きくフューチャーされている柔らかいタッチのピアノはキース自身によるものだろうか。優しく揺蕩うようなペダル・スティール・ギターはラリー・キャンベル。スティーブ・ジョーダンはブラシを使ってこの曲のムードを盛り上げている。

 

5. Trouble

単弦弾きと複弦弾きを組み合わせたキースらしいバッキング・ギター、この曲は先行シングルになった、キースらしいストレートなロックンロール。スライド・ギターはワディ・ワクテル。過剰なオーバー・ダブが無くスッキリした音で、削ぎ落として研ぎ澄まされたキースのワン&オンリーなギターが充分に楽しめる。

 

6. Love Overdue

レゲエ・ミュージシャンのグレゴリー・アイザックス1974年にシングル・ヒットさせた曲のカヴァー。キースのヴォーカルが素晴らしく、これまでよりも自信に満ちており、説得力が増しているように思う。

 

7. Nothing On Me

キース流R&B。オーガニックなギターの音が良く、この小技、この音だけでも聴いていられる曲だ。ギターと双璧のハモンドオルガンはチャールズ・ホッジス。バック・ヴォーカルでアーロン・ネヴィルがゲストで参加している。

 

8. Suspicious

ヴォーカリスト、キースの独壇場か、この上なく美しいバラード・ナンバー。オルガンはTOTOのデヴィッド・ペイチ。なんという組み合わせだろうか。

 

 9. Blues In The Morning

3コードのシンプルなロックンロールで、ヴォーカルもギターもキースがノリノリで演奏しているのが分かる。ファンキーなサックスはボビー・キーズ。ドラムとベースが潰れたような音に加工してあるようで、サックスとギターが際立つようなミックスにしあげてある。アルバムに1曲はこういうのがあると楽しい。

10. Something For Nothing

キースのヴォーカルとハーレム・ゴスペル・クワイアのコール&レスポンスが楽しめる8ビート・ナンバー。ピアノとハモンドはチャールズ・ホッジズ。

11. Illusion

ノラ・ジョーンズ参加のバラード。この曲は男女のデュエットを想定して書かれており、キーズは「女性側のストーリーが必要」と判断したことからジョーンズを起用したという。ノラの抑えた声とキースのハスキーなヴォーカルが予想以上にマッチしている。スティーブ・ジョーダンはヴィブラフォンの腕前も披露している。

 

12. Just A Gift

この曲も美しいバラード。キースはエレキ、アコギ、ピアノに加えティブルという南米発祥の10弦ギターまで披露している。ポール・ノウィンスキーが滑らかなヴィオラを担当している。

13. Goodnight Irene

ブルースマン、レッドベリーのカヴァー。キースによると、トム・ウェイツからレッドベリーに関する書籍を贈られたのをきっかけに、この曲を取り上げたという。アコースティック・ギターとパーカッションによる極めてシンプルな演奏が朴訥としてアーシーで素晴らしい。2ndアルバムに「アイリーン」という曲があるが、関係あるのだろうか。

 

14. Substantial Damage

リバーブのかかったキースのヴォーカルがカッコいいファンク・チューン。派手なコード・チェンジは無く、キースの印象的なギター・リフを核に呪術的に流れていくさまはトランス状態に陥りそうなグルーブである。あえて細かいことを決めずラフにセッションをしているような気軽さが魅力的である。

15. Lovers Plea 

スティーブによれば、このナンバーはオーティス・レディングとスタックス(サウンド)のレガシーへのトリビュート!ということらしい。スタックス・レコードのソングライター/キーボーディストであったスプーナー・オールダムが参加している。ブレイクのところやホーン・アレンジなど、正にスタックスといった雰囲気。ロマンティックなムードも持つクロージング・ナンバーである。

 

 

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Captain(Edward)Teague Sparrow (KIETH RICHARDS/キース・リチャーズ)

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