DAVID SYLVIAN/BRILLIANT TREES(デヴィッド・シルヴィアン/ブリリアント・トゥリーズ) Vinyl Diary
『BRILLIANT TREES』『BRILLIANT TREES』はジャパン解散後、1984年にリリースされたデヴィッド・シルヴィアンの1stソロ・アルバム。イギリスで最高位4位、オランダ7位、日本のオリコンで16位を記録した。
Japan) (ジャパン)は、イギリスのニュー・ウェイブ・バンド。David Sylvian(デヴィッド・シルヴィアン:vo、gt、kb)と実弟Steve Jansen (スティーブ・ジャンセン:ds)、デヴィッドの親友であったMick Karn(ミック・カーン:b,sax)を中心に結成。その後、高校の同級であったRichard Barbieri (リチャード・バルビエリ:kb)を誘い更にオーディションでRob Dean(ロブ・ディーン:gt、5thアルバム製作前に脱退)を迎え入れ、デビュー当初のバンドの形態となる。
初期のサウンドは、黒人音楽やグラム・ロックをポスト・パンク的に再解釈した、ディスコティックながらもぎくしゃくとしたノリをもった音楽性で、イギリスの音楽シーンではほとんど人気がなかった。(日本ではアイドル的人気が先行し、初来日でいきなり武道館公演を行うほどだった)アルバム・リリース毎に初期の荒削りなロックサウンドから次第に耽美的な音像を強めていく。一見ポップなサウンドのなかにカーンのうねるフレットレスベース、バルビエリの抽象的なシンセサウンド、ジャンセンの堅実で豊かなリズムアレンジ、そしてシルヴィアンの頽廃的で内省的なボーカルとリリックといった独特のアレンジを加えることで、他に類を見ない個性を確立。本国でも評価を高め始める。
その後もバンドはアフリカン・ビートや東洋音楽にも接近、エスノ、アンビエント色も加え独特のリズム解釈やグルーヴを追求。シングル『Ghosts』(ゴウスツ)はバンド最高のヒットを記録した。
ディスコグラフィー
1978年『Adolescent Sex』 – 果てしなき反抗
1978年『Obscure Alternatives 』 – 苦悩の旋律
1979年 『Quiet Life』 – クワイエット・ライフ
1980年『Gentlemen Take Polaroids』 – 孤独な影
1981年『Tin Drum』- 錻力の太鼓
1982年 ーバンド解散ー
1983年『Oil On Canvas』 – オイル・オン・キャンヴァス(2枚組ライブ・アルバム)
1984年』『Exorcising Ghosts』- エクソサイジング・ゴウスツ
1991年『Rain Tree Crow』 – レイン・トゥリー・クロウ(名義は違うが事実上の再結成)
『BRILLIANT TREES』
Track List
SIDE A:1 “Pulling Punches” 、2 “The Ink in the Well” 、3 “Nostalgia” 、4 “Red Guitar”
SIDE B:1 “Weathered Wall” 2 、”Backwaters” 、3 “Brilliant Trees”
ミュージシャン:David Sylvian – lead vocals, guitar, piano (treated), tapes, synthesizer, percussion instruments、Richard Barbieri – synthesizer (1, 5)、Wayne Brathwaite – bass guitar (1, 4)、Holger Czukay – French horn, voice, guitar, dictaphone、Ronny Drayton – guitar (1, 4)、Jon Hassell – trumpet (5, 7)、Mark Isham – trumpet track (1, 4)、Steve Jansen – drums, synthesizer, percussion、Steve Nye – synthesizer (3, 4)、Phil Palmer – guitar (1, 4)、Ryuichi Sakamoto – synthesizer/piano (4, 5, 7)、Danny Thompson – double bass (2)、Kenny Wheeler – flugelhorn (2, 3)
「ロックと呼ぶにはインプロビゼーションに満ち満ちているし、ジャズと呼ぶにはフォーマットが違う気もするし、何よりも一体どのようなやり方でこんな楽曲を作れるのだろう?」最初に本作を聴いた率直な感想である。ライナーノーツのピーター・バラカンと坂本龍一の対話にその答えがあったので一部、抜粋する。
坂本: (レッド・ギター、輝ける樹木について)ボクの場合で言うと、まず、ボクが好きなようにやってしまう、、、。ボクがアイデアを出して、それが必要かどうか彼が判断するワケ。ボクが何種類か遊んでみせて、彼が、コレとコレは欲しいっていうやり方。
バラカン: シルヴィアンは自分の欲しい音がものすごくはっきり分かっているね。ねらいを定めているっていうのかな。意外と、プロデューサーとしてズバリ言いたい事を言うっていうかんじだね。
参加ミュージシャンに自由に演奏してもらって、素材が充分に揃ったら、デヴィッド主導で、その素材を切り貼りして仕上げていく、そんなイメージだろうか。だとしたら編集作業に相当な時間がかかっているだろう。そしてそれこそが本作を唯一無二のユニークな作品たらしめていると思う。
1 “Pulling Punches”
エッジの立った、鋭利なファンク・ナンバーのオープニング。ドラム、ベース、ギター×2、キーボードに加えホーン、サンプリングなどかなりの数の音が重ねて構成してある。そんな中にあってもシルヴィアンの声は埋もれず、実に際立っている。
2 “The Ink in the Well”
ウッドベース、ブラッシュ、アコースティック・ギターと、多分にジャズっぽい雰囲気を持ったワルツ。抑えたアコースティックな演奏ながら、ウッドベースは本体の響きまでもが伝わってきそうなリアルな音像だ。サビのメロディがとても美しい。個人的には本作中最も惹かれる曲。
3 “Nostalgia”
シルヴィアンの好きなアンドレイ・タルコフスキー監督作”ノスタルジア”にインスパイアされた曲。パーカッションに繊細な2本のギターが絡む音が骨子をなしている。因みにA2″The Ink in the Well”はコクトー、ピカソの引用があったりして、当時シルヴィアンはこういった人物に傾倒していたようだ。
4 “Red Guitar”
シルヴィアンのソロ・キャリアの中で最高位、全英チャート17位のヒットを記録したシングル。浮遊感漂うAメロとダンサブルなBメロの対比が秀逸。特に盟友坂本龍一のパーカッシブなピアノが耳に残る。
1 “Weathered Wall”
ジャパンの持っていたアンビエントな側面を継承している1曲と言えばいいか、ホルガー・シューカイとリチャード・バルビエリの参加がこの曲に大きく貢献していると思う。捉えどころのない混沌とした音の波の中で、詩情溢れるシルヴィアンのヴォーカルと正確無比なスティーブ・ジャンセンのドラムが一層力強く響く。
2 、”Backwaters”
アルバム中、1番抽象的な雰囲気を持つトラックで、ベースのテーマ・リフのみを軸に様々な音のコラージュが重ねられていく。ここではシルヴィアンの声さえも抽象的な響きで、時に突き放したような歌い方も披露していて、こういった表現の仕方はジャパンでは見受けられなかったのではないか。そういった意味ではかなりのチャレンジだったと思う。タイトルは日本語訳で「よどみの中に」。歌詞には辛辣な箇所もあり彼の苦悩を表現しているのだろうか。
3 “Brilliant Trees”
アルバム最後を飾るこの曲はキーボードとコラージュ、トランペットで構成されている。(後半にパーカッションが入ってくるが)全てのインストルメンツがシルヴィアンのヴォーカルに追随しているような印象で、荘厳な1曲。
A面は曲ごとの個性がはっきりとあって色彩豊か、B面は3曲が連作のように響いて統一感がある。A面とB面の印象がガラリと変わるところも、このアルバムの魅力かもしれない。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ他)絵画に興味ある方はご覧ください。