JAPAN / GENTLEMEN TAKE POLAROIDS(ジャパン/孤独な影) Vinyl Diary
『GENTLEMEN TAKE POLAROIDS』前作3rd『QUIET LIFE』からちょうど1年で届けられた1980年リリースの4thアルバム、
Japan) (ジャパン)は、イギリスのニュー・ウェイブ・バンド。David Sylvian(デヴィッド・シルヴィアン:vo、gt、kb)と実弟Steve Jansen (スティーブ・ジャンセン:ds)、デヴィッドの親友であったMick Karn(ミック・カーン:b,sax)を中心に結成。その後、高校の同級であったRichard Barbieri (リチャード・バルビエリ:kb)を誘い更にオーディションでRob Dean(ロブ・ディーン:gt、5thアルバム製作前に脱退)を迎え入れ、デビュー当初のバンドの形態となる。
初期のサウンドは、黒人音楽やグラム・ロックをポスト・パンク的に再解釈した、ディスコティックながらもぎくしゃくとしたノリをもった音楽性で、イギリスの音楽シーンではほとんど人気がなかった。(日本ではアイドル的人気が先行し、初来日でいきなり武道館公演を行うほどだった)アルバム・リリース毎に初期の荒削りなロックサウンドから次第に耽美的な音像を強めていく。一見ポップなサウンドのなかにカーンのうねるフレットレスベース、バルビエリの抽象的なシンセサウンド、ジャンセンの堅実で豊かなリズムアレンジ、そしてシルヴィアンの頽廃的で内省的なボーカルとリリックといった独特のアレンジを加えることで、他に類を見ない個性を確立。本国でも評価を高め始める。
その後もバンドはアフリカン・ビートや東洋音楽にも接近、エスノ、アンビエント色も加え独特のリズム解釈やグルーヴを追求。シングル『Ghosts』(ゴウスツ)はバンド最高のヒットを記録した。
ディスコグラフィー
1978年『Adolescent Sex』 – 果てしなき反抗
1978年『Obscure Alternatives 』 – 苦悩の旋律
1979年 『Quiet Life』 – クワイエット・ライフ
1980年『Gentlemen Take Polaroids』 – 孤独な影
1981年『Tin Drum』- 錻力の太鼓
1982年 ーバンド解散ー
1983年『Oil On Canvas』 – オイル・オン・キャンヴァス(2枚組ライブ・アルバム)
1984年』『Exorcising Ghosts』- エクソサイジング・ゴウスツ
1991年『Rain Tree Crow』 – レイン・トゥリー・クロウ(名義は違うが事実上の再結成)
『GENTLEMEN TAKE POLAROIDS』Track List
1. Gentlemen Take Polaroids、2. Swing、3. Burning Bridges、4. My New Career
5. Methods of Dance、6. Ain’t That Peculiar、7. Nightporter、8. Taking Islands In Africa
1st、2ndアルバムから大きく舵を切った3rdアルバム『QUIET LIFE』。その路線を更に深化させた仕上がりの通算4作目、ヴァージン・レコード移籍第1弾となるアルバム『GENTLEMAN TAKE POLAROIDS』。
カーンとジャンセンの高度な技は本作で更に飛躍、エッジのある立体的なリズム・セクションを聴かせるし、シルヴィアンのヨーロピアン・ダンディズムとでも言うべきヴォーカル・スタイルはここに来て完成のいきに達している。一聴して分かる前作との違いはディーンのギターが極端に少ないことで、実際スタジオでも、彼は必要な時にだけ呼ばれてレコーディングしたようだ(このアルバムを最後にディーンは脱退している)
僕がこのバンドに感じる魅力は、完璧にコントロールされたシルヴィアンのヴォーカルと、肉感的なまでに力強いリズム隊との静と動の対比の妙である(肉感的とは、こんな言い方をされているのを聞いたことはないのだけれども、そう思えるのだからしようがない)この両者をうまく繋ぐのがバルビエリの存在ということになるのだろうか。
Side A竹を割ったように正確で雑味のないジャンセンのドラム、縦横無尽に歌うカーンのベース、そして甘くトゲのあるシルヴィアンのヴォーカルと浮遊感漂うバルビエリのキーボード、このアルバムを象徴するオープニング・ナンバーでありタイトル・ソングでもある軽快なエレクトロ・ポップのA-1「Gentlemen Take Polaroids」。3分間のポップ・ソングどころか7分という長尺の曲である。もう一塊のポップ・バンドではいられないというシルヴィアンの決意表明か。1曲の中にも見事にドラマティックな起承転結がある。 抽象的なバルビエリの鍵盤に導かれて始まる、A-2「Swing」。ソフィスティケイトされたファンキーさで聴かせる。前作に比べ緊張感が薄まり、シルヴィアンも肩の力を抜いて歌っているように聴こえる。また今回のアルバムの歌詞はこれまでの作品と比べて悲壮感が薄れ、より抽象的表現が多いように思う。そして、この曲もまた6分超えの長尺である。 ドラムもベースも入らず、荘重に重ねられた鍵盤とサックスで曲が進行する3. Burning Bridges 。最後にワン・コーラスだけ歌があるだけだが、詞世界と見事に調和した曲である。 A面ラストの4. My New Careerもダンサブルなチューン。「彼らが僕たちの唄をうたっている。僕の新しい人生のはじまりに」とシルヴィアンは歌う。バンドの状態を表す象徴的な1曲ではないだろうか。
Side B ライブで盛り上がるアップ・テンポなナンバー、B-1「Methods of Dance」。このアルバムで唯一ギターが比較的前面に出ていて、1回目の間奏もギター、2回目のソロはサックス。キーボードとコーラスがオリエンタルなムードをかもしているのは自作への布石か? 意表を突くスモーキー・ロビンソンの変拍子カヴァー、B-2「Ain’t That Peculiar」。強烈に起伏のあるリズムと抑揚のついたシルヴィアンのヴォーカル、抽象的なバルビエリのキーボードが絡む、ジャパンの新しい一面が垣間見える1曲。 「愛の嵐」の映像が頭に浮かぶ、ピアノが主体となるワルツ調のB-3「Nightporter」はヨーロッパ的な香りが濃厚な1曲。イントロを聴いてすぐにサティを連想した。この曲もシンプルながら進むごとに楽器が変わりメロディが変わり、非常に作り込まれた、といって聴き疲れない、なんともいえない荘厳な仕上がりになっている。 アルバム最後、クロージング・ナンバーの、B-4「Taking Islands In Africa」は坂本龍一が参加。B-3の暗いメロディを打ち消すような、民族的な打楽器の音が配された、やや明るめのこの曲でアルバムは終わる。
この翌年、傑作5thアルバム『Tin Drum』をリリース、解散への道を進むことになる。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。