ECHO & THE BUNNYMEN / ECHO & THE BUNNYMEN(エコー&ザ・バニーメン/エコー&ザ・バニーメン) Vinyl Diary
『ECHO & THE BUNNYMEN』前作4th『OCEAN RAIN』から3年、満を辞してリリースされたセルフ・タイトルの5thアルバム
エコー&ザ・バニーメン
イアン・マッカロク – ヴォーカル、ギター
ブルージーで粘りがありエモーショナルな声、表現力。伸びのある太い声は時々ホーンのように聴こえたりする。公言する影響を受けたミュージシャン、アーティストはジム・モリソン、ヴェルヴェッツ、デビッド・ボウイ、レナード・コーエンなど。ロンドンよりもニューヨーク・パンク(テレヴィジョン、パティ・スミス他)からの影響が強いそうだ。
ウィル・サージェント – ギター
リバーブなど空間系のエフェクターを巧みに操るギタリスト。フェンダー、グレッチ系の粒立ちの良いギターの音色と攻撃的なハイ・テンションのキレの良いカッティングが持ち味。現在もイアンと共に活動を続けている。
レス・パティスン – ベース
竹を割ったような正確なフレージング、ベースだけでも曲を引っ張れるような個性的かつ立体的なベース・リフが作れる職人。解散した後の復活1作目には参加したが、その後は家庭の事情により不参加(メンバーとの不和ではない)
ビート・デイ・フレイタス – ドラムス
メンバー募集により最後にバンドに加入したドラマー(ピート加入までバンドは生ドラムの代わりにドラムマシンを代用していた、ピートが加入した当初はマシンを使っていたバニーメンを支持する声もあったらしい)セルフタイトルの5作目「ECHO & THE BUNNYMEN」を完成させた後、バイク事故により死亡。
ビートルズを産んだリヴァプール出身のバンドである。
アルバム・ディスコグラフィー
1980年 1st『CROCODILES』全英17位。評論家の称賛を受け、イギリスでトップ20入りを果たす
1981年 2nd 『HEAVEN UP HERE』全英10位、全米184位。イギリスのアルバムチャートで10位に達し、NME紙の読者人気投票で年間ベスト・アルバムに選ばれた
1983年 3rd『PORCUPINE』全英2位、全米137位。先行シングルの“The Cutter”がイギリストップ10に入り、満を持して発表されたアルバムは英チャート2位にまで上り詰める
1984年4th 『OCEAN RAIN』全英4位、全米87位。“Killing Moon”、“Silver”、“Seven Seas”などのヒット曲が生み出された。また、同年4月には初来日も果たした。
1985年 『SONGS TO LEARN & SING』(シングルを集めたコンピレーション・アルバム)リリース
1987年 5th『ECHO & THE BUNNYMEN 』全英4位、全米51位
1988年 『NEW LIVE AND RARE/まぼろしの世界』(12”+LIVEレア・トラック集)リリース
イアンは『Echo & the Bunnymen』を最後にソロアーティストに転身するため脱退。ドラムのピート・ディ・フレイタスが交通事故により他界する
1990年 6th『Reverberation』全英19位
残されたメンバーのサージェントとパティスンは、リードシンガーとしてノエル・バークを、ドラマーとしてデイモン・リースを、キーボーディストとしてジェイク・ブロックマンを参加させ活動を継続。新体制で『Reverberation』をリリースしたが評論家には酷評され、マッカロクからも「Echo & the Bogusmen (偽者ども)」と揶揄される。商業的にも失敗に終わり、バンドは1993年5月に解散した。
1994年 二枚のソロアルバムを発表した後、マッカロクは新プロジェクトElectrafixionで再びサージェントと手を組み、セルフ・タイトルのアルバムをリリースするも単発で終わる。
1997年 『Evergreen』全英8位。マッカロクとサージェントはパティスンと一緒にエコー&ザ・バニーメンを再始動させた。(3人が集うのは5th以来10年ぶり)アルバムは批評家に熱狂的に支持され、シングル“Nothing Lasts Forever”はイギリスでトップ10に入った。
1999年8th 『What Are You Going to Do with Your Life? 』全英21位。パティスンが2度目の脱退(家庭の事情による脱退で、仲違いしたわけではない)をしたが、マッカロクとサージェントは新たにメンバーを加え活動を続ける。
2001年 9th『Flowers」 全英56位
2005年 10th『Siberia』全英83位
2009年11th 『The Fountain』 全英63位
2014年 12th『Meteorites』全英37位、全米138位
2019年 『 JOHN PEEL SESSIONS1979~1983』(スタジオ・ライブ・コンピレーション)リリース
『ECHO & THE BUNNYMEN』 Track ListA-1 The Game、A-2 Over You、A-3 Bedbugs and Ballyhoo、A-4 All in Your Mind、A-5 Bombers Bay
B-1 Lips Like Sugar、B-Lost and Found、B-3 New Direction、B-4 Blue Blue Ocean、B-5 Satellite、 B-6 All My Life
このアルバムがこれまでの作品と違うところ、まずはジャケットである。これまで自然の中で佇む遠景の写真ばかりだが、ここに来て4人のバスト・アップのしかもモノクロの写真である。(撮影は著名カメラマン、アントン・コービン)
また、タイトルもバンド名だけのシンプルなセルフ・タイトルである。このことから、自分たちのクリエイトしてきた作品に対する確たる自信と、ここからまた新しい1歩を踏み出そうといった気概を感じるのだがどうだろうか。
音の方は、これまでの彼らのカラーを踏襲しつつもサイケデリック色が若干後退したことと、張り詰めた緊張感がいくらか和らいだ代わりに、よりダイナミックでシンプルでストレートなロック・バンドになった、という印象である。また、本作にはTHE DOORSのオルガン奏者レイ・マンザレクが参加していることも話題になった。
日本盤のライナーによると、「前作“オーシャン・レイン“では曲作りが中途半端なままにスタジオ入りしたことを反省している」と後にマッカロクは語っている。このことから、本作では入念な曲作りを行ったことがうかがえる。確かに本作収録曲は、それぞれ起承転結が明快で、キャッチーな楽曲が並んでいるように思う。また作りこめたことで一層ボトムが太くなった感がある。
Side A
オープニング・ナンバーA-1 The Game でアルバムはスタート、一聴してバンドが歌に寄り添う演奏にシフトしていると伺える、曲調も明るく大らかで、これまでの彼等のイメージを大幅に覆す印象を持つ。 A-2 Over You、も曲調がメジャーでメロディアス、キーボード(オルガン?)が大胆に導入されている。 フレイタスのブラッシュ・ワークがグルービーなA-3 Bedbugs and Ballyhoo、はこれまでバニーメンがあまり取り入れてこなかった、ドッシリしたファンク・チューンで、これが実にカッコよく仕上がっている。ファンキーなオルガンとピアノ・ソロも言うことなし。 性急な8ビートのA-4 All In Your Mind、は、ツヤのあるサージェントのギターとマッカロクの低音ボイスを楽しみたい。意外ながら、この曲でのベースはシンセ・ベースのような音だ。 A-5 Bombers Bayは、シンプルな強調で、トリッキーな部分はないが、歌に焦点を当ててしっかり作り込まれている印象を受ける。
Side B
B-1 Lips Like Sugar、はバニーメンの持つ前衛的な部分とコマーシャルな部分が見事に融合されており、実によく羅練り込まれた、魅力的な1曲。A-3と並び本作のベスト・トラックと言いたい。 彼等のルーツであろう、マージー・ビートを今に蘇らせたような、B-Lost and Foundでは、間奏で逆回転デープを使用しているようだ。 B-3 New Direction、は高速の16ビートを刻むフレイタスのハイハットがひたすら気持ち良い。 ピアノの裏で鳴るサージェントのカッティングが粋な、B-4 Blue Blue Ocean、マッカロクのヴォーカルの高音と音に分かれたダブル・トラックが、この曲を一層奥行きのあるものにしている。 B-5 Satellite 時に少年のような、時にカオスを感じさせる、表現力を増したマッカロクのヴォーカル、そして、ここでもフレイタスの気迫のこもったドラムが素晴らしく、アルバム中1番尖った強調といえる。 アルバム・ラストを飾るB-6 All My Lifeはアコースティック・ギターとストリングスが美しく響く、スローで穏やかなクロージング・ナンバー。激しい荒波の中での航海を終えて静かに港に帰っていく船を見つめているかのようだ。
ディスコグラフィーにも記載している通り、このアルバムリリース後にヴォーカルのマッカロクはグループを脱退、そしてドラムのフレイタスの死によりバンドは失速していく。
12”+LIVEレア・トラック集『NEW LIVE AND RARE/まぼろしの世界』に続く
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。