ECHO & THE BUNNYMEN / SIBERIA(エコー&ザ・バニーメン/サイベリア) Vinyl Diary

『SIBERIA』
前作『FLOWERS』から4年のインターバルを経て製作された、エコー&ザ・バニーメン通算9作目、2005年にリリース
エコー&ザ・バニーメン
イアン・マッカロク – ヴォーカル、ギター
ブルージーで粘りがありエモーショナルな声、表現力。伸びのある太い声は時々ホーンのように聴こえたりする。公言する影響を受けたミュージシャン、アーティストはジム・モリソン、ヴェルヴェッツ、デビッド・ボウイ、レナード・コーエンなど。ロンドンよりもニューヨーク・パンク(テレヴィジョン、パティ・スミス他)からの影響が強いそうだ。
ウィル・サージェント – ギター
リバーブなど空間系のエフェクターを巧みに操るギタリスト。フェンダー、グレッチ系の粒立ちの良いギターの音色と攻撃的なハイ・テンションのキレの良いカッティングが持ち味。現在もイアンと共に活動を続けている。
レス・パティスン – ベース
竹を割ったような正確なフレージング、ベースだけでも曲を引っ張れるような個性的かつ立体的なベース・リフが作れる職人。解散した後の復活1作目には参加したが、その後は家庭の事情により不参加(メンバーとの不和ではない)
ビート・デイ・フレイタス – ドラムス
メンバー募集により最後にバンドに加入したドラマー(ピート加入までバンドは生ドラムの代わりにドラムマシンを代用していた、ピートが加入した当初はマシンを使っていたバニーメンを支持する声もあったらしい)セルフタイトルの5作目「ECHO & THE BUNNYMEN」を完成させた後、バイク事故により死亡。
ビートルズを産んだリヴァプール出身のバンドである。
アルバム・ディスコグラフィー
1980年 1st『CROCODILES』 全英17位。評論家の称賛を受け、イギリスでトップ20入りを果たす
1981年 2nd 『HEAVEN UP HERE』全英10位、全米184位。イギリスのアルバムチャートで10位に達し、NME紙の読者人気投票で年間ベスト・アルバムに選ばれた
1983年 3rd『PORCUPINE』全英2位、全米137位。先行シングルの“The Cutter”がイギリストップ10に入り、満を持して発表されたアルバムは英チャート2位にまで上り詰める
1984年4th 『OCEAN RAIN』全英4位、全米87位。“Killing Moon”、“Silver”、“Seven Seas”などのヒット曲が生み出された。また、同年4月には初来日も果たした
1985年 『SONGS TO LEARN & SING』(シングルを集めたコンピレーション・アルバム)リリース
1987年 5th『ECHO & THE BUNNYMEN 』全英4位、全米51位
1988年 『NEW LIVE AND RARE/まぼろしの世界』(12”+LIVEレア・トラック集)リリース
イアンは『ECHO & THE BUNNYMEN』を最後にソロアーティストに転身するため脱退。ドラムのピート・ディ・フレイタスが交通事故により他界する
1990年 6th『Reverberation』全英19位
残されたメンバーのサージェントとパティスンは、リードシンガーとしてノエル・バークを、ドラマーとしてデイモン・リースを、キーボーディストとしてジェイク・ブロックマンを参加させ活動を継続。新体制で『Reverberation』をリリースしたが評論家には酷評され、マッカロクからも「Echo & the Bogusmen (偽者ども)」と揶揄される。商業的にも失敗に終わり、バンドは1993年5月に解散した。
1994年 二枚のソロアルバムを発表した後、マッカロクは新プロジェクトElectrafixionで再びサージェントと手を組み、セルフ・タイトルのアルバムをリリースするも単発で終わる。
1997年 『EVERGREEN』全英8位。マッカロクとサージェントはパティスンと一緒にエコー&ザ・バニーメンを再始動させた。(3人が集うのは5th以来10年ぶり)アルバムは批評家に熱狂的に支持され、シングル“Nothing Lasts Forever”はイギリスでトップ10に入った。
1999年8th 『WHAT ARE YOU GOING TO DO WITH YOUR LIFE? 』 全英21位。パティスンが2度目の脱退(家庭の事情による脱退で、仲違いしたわけではない)をしたが、マッカロクとサージェントは新たにメンバーを加え活動を続ける。
2001年 9th『FLOWERS』 全英56位
2002年 『LIVE IN LIVERPOOL』
2005年 10th『SIBERIA』全英83位
2009年11th 『THE FOUNTAIN』 全英63位
2014年 12th 『METEORITES』全英37位、全米138位
2019年 『 JOHN PEEL SESSIONS1979~1983』(スタジオ・ライブ・コンピレーション)リリース
『SIBERIA』
Track List
1”,Stormy Weather”、 2”,All Because of You Days” 、3”,Parthenon Drive” 、4”,In the Margins” 、5”,Of a Life” 、6”,Make Us Blind” 、7,”Everything Kills You” 、8”,Siberia” 、9”,Sideways Eight” 、10,”Scissors in the Sand” 、11,”What If We Are?” 、
前作『FLOWERS』から4年のインターバルを経て製作された、エコー&ザ・バニーメン通算9作目の『サイベリア』。本作は2ndアルバム『ヘブン・アップ・ヒア』を手掛けた旧知のヒュー・ジョーンズがプロデュースを担当している。そしてバックを固めるのはベースにピーター・ウィルキンソン、キーボードにポール・フレミング、ドラムスにサイモン・フィンレイである。
80年代の彼らの演奏は、時にヒリヒリするような、圧倒的なテンションの高さで聴き手に迫ってきたものだが、ここに来て、演奏がおおらかになったというのか、適度な丸み、親しみやすさが増したと思う。また、ポジティブなエネルギーに満ちた楽曲も増えたのではないだろうか。
年齢による変化もあるだろう。このアルバム製作時点でイアンは46歳、ウィルは47歳である。それにしても、数年に一枚ペースを崩さず、コンスタントに一定のクオリティ以上の作品を作り続ける、尽きない創作意欲はどこから来るのだろうか。
本作も仕上がりは素晴らしく、どこを切ってもバニーメン印であるが、『EVERGREEN』以降のアルバムの中では、1番活力に溢れたエネルギッシュなアルバムではないだろうか。例えばベース・ラインが非常に印象的な3”, Parthenon Drive” は、まるでレス・パティスン在籍時80年代のバニーズを思い起こさせるようなソリッドな楽曲である。また10,” Scissors in the Sand” は、ややハードな音作りのパンキッシュなナンバーで、こういう尖った感覚は、いつまでも持ち続けて欲しいと思う。
一方で4”,In the Margins” 、7,”Everything Kills You” 、11,”What If We Are?” 、など、ミディアム〜スローの曲が実に心に響く。気になるイアンの掠れ声も、それを逆手にとって、むしろ掠れを活かすような歌い方を見出したのではないか、とさえ思ってしまう。
特にクロージング・ナンバーの 11,”What If We Are?” 。ピアノ、ヴァイオリンをフィーチャーし、ビートルズ・ライクなストリングス・アレンジも出色、イアンのヴォーカルが沁みるバラードである。優しく包み込むような歌声だ。
もちろん、オープニング・ナンバー 1”,Stormy Weather”や10,”Scissors in the Sand” ではウィルのキラキラしたギターが堪能出来る。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。