ECHO & THE BUNNYMEN / FLOWERS(エコー&ザ・バニーメン/フラワーズ) Vinyl Diary

『FLOWERS』前作『WITH YOUR LIFE』から2年を経て、2001年にリリースされた、通算8作目になる『FLOWERS』
エコー&ザ・バニーメン
イアン・マッカロク – ヴォーカル、ギター
ブルージーで粘りがありエモーショナルな声、表現力。伸びのある太い声は時々ホーンのように聴こえたりする。公言する影響を受けたミュージシャン、アーティストはジム・モリソン、ヴェルヴェッツ、デビッド・ボウイ、レナード・コーエンなど。ロンドンよりもニューヨーク・パンク(テレヴィジョン、パティ・スミス他)からの影響が強いそうだ。
ウィル・サージェント – ギター
リバーブなど空間系のエフェクターを巧みに操るギタリスト。フェンダー、グレッチ系の粒立ちの良いギターの音色と攻撃的なハイ・テンションのキレの良いカッティングが持ち味。現在もイアンと共に活動を続けている。
レス・パティスン – ベース
竹を割ったような正確なフレージング、ベースだけでも曲を引っ張れるような個性的かつ立体的なベース・リフが作れる職人。解散した後の復活1作目には参加したが、その後は家庭の事情により不参加(メンバーとの不和ではない)
ビート・デイ・フレイタス – ドラムス
メンバー募集により最後にバンドに加入したドラマー(ピート加入までバンドは生ドラムの代わりにドラムマシンを代用していた、ピートが加入した当初はマシンを使っていたバニーメンを支持する声もあったらしい)セルフタイトルの5作目「ECHO & THE BUNNYMEN」を完成させた後、バイク事故により死亡。
ビートルズを産んだリヴァプール出身のバンドである。
アルバム・ディスコグラフィー
1980年 1st『CROCODILES』 全英17位。評論家の称賛を受け、イギリスでトップ20入りを果たす
1981年 2nd 『HEAVEN UP HERE』全英10位、全米184位。イギリスのアルバムチャートで10位に達し、NME紙の読者人気投票で年間ベスト・アルバムに選ばれた
1983年 3rd『PORCUPINE』全英2位、全米137位。先行シングルの“The Cutter”がイギリストップ10に入り、満を持して発表されたアルバムは英チャート2位にまで上り詰める
1984年4th 『OCEAN RAIN』全英4位、全米87位。“Killing Moon”、“Silver”、“Seven Seas”などのヒット曲が生み出された。また、同年4月には初来日も果たした
1985年 『SONGS TO LEARN & SING』(シングルを集めたコンピレーション・アルバム)リリース
1987年 5th『ECHO & THE BUNNYMEN 』全英4位、全米51位
1988年 『NEW LIVE AND RARE/まぼろしの世界』(12”+LIVEレア・トラック集)リリース
イアンは『ECHO & THE BUNNYMEN』を最後にソロアーティストに転身するため脱退。ドラムのピート・ディ・フレイタスが交通事故により他界する
1990年 6th『Reverberation』全英19位
残されたメンバーのサージェントとパティスンは、リードシンガーとしてノエル・バークを、ドラマーとしてデイモン・リースを、キーボーディストとしてジェイク・ブロックマンを参加させ活動を継続。新体制で『Reverberation』をリリースしたが評論家には酷評され、マッカロクからも「Echo & the Bogusmen (偽者ども)」と揶揄される。商業的にも失敗に終わり、バンドは1993年5月に解散した。
1994年 二枚のソロアルバムを発表した後、マッカロクは新プロジェクトElectrafixionで再びサージェントと手を組み、セルフ・タイトルのアルバムをリリースするも単発で終わる。
1997年 『EVERGREEN』全英8位。マッカロクとサージェントはパティスンと一緒にエコー&ザ・バニーメンを再始動させた。(3人が集うのは5th以来10年ぶり)アルバムは批評家に熱狂的に支持され、シングル“Nothing Lasts Forever”はイギリスでトップ10に入った。
1999年8th 『WHAT ARE YOU GOING TO DO WITH YOUR LIFE? 』 全英21位。パティスンが2度目の脱退(家庭の事情による脱退で、仲違いしたわけではない)をしたが、マッカロクとサージェントは新たにメンバーを加え活動を続ける。
2001年 9th『FLOWERS』 全英56位
2002年 『LIVE IN LIVERPOOL』
2005年 10th『SIBERIA』全英83位
2009年11th 『THE FOUNTAIN』 全英63位
2014年 12th 『METEORITES』全英37位、全米138位
2019年 『 JOHN PEEL SESSIONS1979~1983』(スタジオ・ライブ・コンピレーション)リリース
前作『WITH YOUR LIFE』から2年を経て、2001年にリリースされた、通算8作目になる『FLOWERS』。非常にしっとりした、歌モノの要素が強かった前作からの反動か、所属もインディーのクッキング・ヴァイナルに移籍して心機一転、ウィルのギターが冴えまくっている。バンド・メンバーはベースにアレックス・ジャーメインズ、キーボードにセリ・ジェームス、ドラムにヴィンセント・ジャーミソンを迎えて溌剌とした演奏を聴かせてくれる。
実際、今回はリハーサルからピートとレスがいた頃のようなテンションの高さだったようで、次々と曲が生まれ、レコーディングもこれまでで最も早いスピードで行われたというエピソードからも、バンドの調子の良さが伺える。曲調はミディアム・テンポが多いが、アレンジが多彩なため、何度でも繰り返し聴けそうなアルバムである。
インナースリーブには、メンバーそれぞれの使用イクイップメンツが詳細に記載してある。ウィルはグレッチをはじめ、ヴォックスやリッケンバッカーなど計6本のギターをスタジオに持ち込んだらしく、相変わらずのギター少年ぶりで微笑ましい。
『FLOWERS』
Track List
1.”King of Kings” 、2.”SuperMellowMan” 、3.”Hide & Seek” 、4.”Make Me Shine” 、5.”It’s Alright” 、6.”Buried Alive” 、7.”Flowers” 、8.”Everybody Knows” 、9.”Life Goes On”、10.”An Eternity Turns”、11.”Burn for Me”
1.”King of Kings” 、アルバム・オープニングを飾る落ち着いた、そして独特の緊張感を孕んだトーンのミディアム・ナンバー。浮遊感溢れるウィルのサイケデリックなギターが、時折りエキゾチックなフレーズも盛り込みながら散りばめられ、巧みなワウ・ペダルも披露している。
2.”SuperMellowMan” 、もじっくり聴かせるナンバー。掠れ気味の、陰影に富んだイアンの声が味わい深く、また豊かで大きくウネるフレーズのベース・ラインがとても耳に残る。
3.”Hide & Seek” 、短調のAメロと長調のサビの対比が実に鮮やかな1曲。ここでもエキゾチックなフレーズが印象的。イントロのギターのアルペジオもシンプルながらとても美しい。
4.”Make Me Shine” 、ヴァイブラフォンやテープ逆回転など、様々な音色を駆使した、奥行きのある音作りで、聴くたびに発見のありそうな1曲。これぞリヴァプール!といった雰囲気のギターの音色。タイトル通り、キラキラとした輝きを放つ1曲。
5.”It’s Alright” 、不穏な空気をまとったイントロが緊張感のあるナンバー。サビのコーラスは、これまでのバニーメンには無くキャッチーで、ちょっと意表を突かれた感があり、ある意味新境地といえるかもしれない。
6.”Buried Alive” 、ライブ・イン・リヴァプールでも選曲されていた、ゆったりとしたポップ・ソング。1度聴いただけでも口ずさめそうな、とても耳に残るピースフルな雰囲気を纏った柔らかなメロディのナンバー。
7.”Flowers” 、タイトル・ナンバー。イントロ〜Aメロのウィルのギターが、今まであまり聴いたことがないような、いわゆるブルースを感じさせるもので、些か驚いた。高低差が激しいにも関わらず表情豊かなイアンのヴォーカルも聴きもの。
8.”Everybody Knows” 、4.”Make Me Shine”と同様にポップで、所謂バニーメン流リヴァプール・サウンドといった雰囲気。ウィル得意のジャキジャキのバッキング・ギターが痛快なカッコ良さ。
9.”Life Goes On”、これも、ザ・マージー・ピート!な、明るくキャッチーなメロディのポップ・ナンバー。タイトル通りのポジティブなパワーを感じる、バンドの調子よさを象徴するような1曲。
10.”An Eternity Turns”、アルバム中、1番アッパーでエネルギッシュなロッキン・チューン。聴いていてシンプルに熱くなれるこういう曲は、アルバムにつき1曲は欲しいところ。この曲のイントロを聴いて、なんとなくドアーズを思い出した。
11.”Burn for Me” 、ヴォーカルとユニゾンのキラキラしたギターの絡みが美しいスロー・チューン。なんてことのない1曲なのだが、イアンとウィルの、永く築き上げてきた固い絆を感じる。
12.”MARBLE TOWERS”、8ビートのロック・ナンバー。イアンのヴォーカルに靄がかかったようなエフェクトがかけてあり、不思議なタッチに仕上がっている。計算されたウィルのスキのないギターが素晴らしい。
13.”SCRATCH THE PAST”、モータウン風のリズムで始まり、影のあるメロディと色彩豊かなギターに彩られたクロージング・ナンバー。最近のバニーズの作品としては、こういった熱く、エモーショナルな曲でラストを迎えるのは異色だと思う。それにしても、“スクラッチ・ザ・パスト“なんてカッコいいワードだろうか。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。