ECHO & THE BUNNYMEN / WITH YOUR LIFE(エコー&ザ・バニーメン/ウィズ・ユア・ライフ) Vinyl Diary

『WHAT ARE YOU GOING TO DO WITH YOUR LIFE』
1999年にリリース、バンドの新境地を切り拓いたバニーメン復活第2弾の快作
エコー&ザ・バニーメン
イアン・マッカロク – ヴォーカル、ギター
ブルージーで粘りがありエモーショナルな声、表現力。伸びのある太い声は時々ホーンのように聴こえたりする。公言する影響を受けたミュージシャン、アーティストはジム・モリソン、ヴェルヴェッツ、デビッド・ボウイ、レナード・コーエンなど。ロンドンよりもニューヨーク・パンク(テレヴィジョン、パティ・スミス他)からの影響が強いそうだ。
ウィル・サージェント – ギター
リバーブなど空間系のエフェクターを巧みに操るギタリスト。フェンダー、グレッチ系の粒立ちの良いギターの音色と攻撃的なハイ・テンションのキレの良いカッティングが持ち味。現在もイアンと共に活動を続けている。
レス・パティスン – ベース
竹を割ったような正確なフレージング、ベースだけでも曲を引っ張れるような個性的かつ立体的なベース・リフが作れる職人。解散した後の復活1作目には参加したが、その後は家庭の事情により不参加(メンバーとの不和ではない)
ビート・デイ・フレイタス – ドラムス
メンバー募集により最後にバンドに加入したドラマー(ピート加入までバンドは生ドラムの代わりにドラムマシンを代用していた、ピートが加入した当初はマシンを使っていたバニーメンを支持する声もあったらしい)セルフタイトルの5作目「ECHO & THE BUNNYMEN」を完成させた後、バイク事故により死亡。
ビートルズを産んだリヴァプール出身のバンドである。
アルバム・ディスコグラフィー
1980年 1st『CROCODILES』 全英17位。評論家の称賛を受け、イギリスでトップ20入りを果たす
1981年 2nd 『HEAVEN UP HERE』全英10位、全米184位。イギリスのアルバムチャートで10位に達し、NME紙の読者人気投票で年間ベスト・アルバムに選ばれた
1983年 3rd『PORCUPINE』全英2位、全米137位。先行シングルの“The Cutter”がイギリストップ10に入り、満を持して発表されたアルバムは英チャート2位にまで上り詰める
1984年4th 『OCEAN RAIN』全英4位、全米87位。“Killing Moon”、“Silver”、“Seven Seas”などのヒット曲が生み出された。また、同年4月には初来日も果たした
1985年 『SONGS TO LEARN & SING』(シングルを集めたコンピレーション・アルバム)リリース
1987年 5th『ECHO & THE BUNNYMEN 』全英4位、全米51位
1988年 『NEW LIVE AND RARE/まぼろしの世界』(12”+LIVEレア・トラック集)リリース
イアンは『ECHO & THE BUNNYMEN』を最後にソロアーティストに転身するため脱退。ドラムのピート・ディ・フレイタスが交通事故により他界する
1990年 6th『Reverberation』全英19位
残されたメンバーのサージェントとパティスンは、リードシンガーとしてノエル・バークを、ドラマーとしてデイモン・リースを、キーボーディストとしてジェイク・ブロックマンを参加させ活動を継続。新体制で『Reverberation』をリリースしたが評論家には酷評され、マッカロクからも「Echo & the Bogusmen (偽者ども)」と揶揄される。商業的にも失敗に終わり、バンドは1993年5月に解散した。
1994年 二枚のソロアルバムを発表した後、マッカロクは新プロジェクトElectrafixionで再びサージェントと手を組み、セルフ・タイトルのアルバムをリリースするも単発で終わる。
1997年 『EVERGREEN』全英8位。マッカロクとサージェントはパティスンと一緒にエコー&ザ・バニーメンを再始動させた。(3人が集うのは5th以来10年ぶり)アルバムは批評家に熱狂的に支持され、シングル“Nothing Lasts Forever”はイギリスでトップ10に入った。
1999年8th 『WHAT ARE YOU GOING TO DO WITH YOUR LIFE? 』 全英21位。パティスンが2度目の脱退(家庭の事情による脱退で、仲違いしたわけではない)をしたが、マッカロクとサージェントは新たにメンバーを加え活動を続ける。
2001年 9th『FLOWERS』 全英56位
2002年 『LIVE IN LIVERPOOL』
2005年 10th『SIBERIA』全英83位
2009年11th 『THE FOUNTAIN』 全英63位
2014年 12th 『METEORITES』全英37位、全米138位
2019年 『 JOHN PEEL SESSIONS1979~1983』(スタジオ・ライブ・コンピレーション)リリース
『WHAT ARE YOU GOING TO DO WITH YOUR LIFE』
Track List
1,”What Are You Going to Do with Your Life?” 、2,”Rust” 、3,”Get in the Car” 、4,”Baby Rain” 、5,”History Chimes” 、6,”Lost on You” 、7,”Morning Sun” 、8,”When It All Blows Over” 、9,”Fools Like Us”
自分の音楽的センスなんて怪しい(疑わしい)ものだ、などと思ったことはないだろうか?例えば、ニューヨーク・パンクの系譜で語られるテレヴィジョンを例にあげてみる。
彼らのリリースした1stアルバム、『マーキー・ムーン』、そして、2ndアルバム『アドベンチャー』。この2枚を比べた時、大半の人は1stをプッシュすることと思う。何故ならこれは、70年代のニューヨークを象徴する傑作の誉れ高い作品だからである。
ところが、自分はというと、2ndも結構好き、というか、かなり好きなアルバムであって、どちらかというとターンテーブルに乗るのは圧倒的に『アドベンチャー』の方が多いのである。
同じようなことは、ドアーズで例えることも出来る。1stはもちろん大好きだが、ラスト・スタジオ・アルバム『LAウーマン」はもっと好きで、こちらの方が聴く回数は圧倒的に多いのである。
一般的な人とは嗜好が異なるのか、はたまた天邪鬼なだけなのか。そしてここで紹介するエコー&ザ・バニーメンの8枚目のスタジオ・アルバム『EVERGREEN』。これまでのバニーメンと比較すると、派手さが無く、一言でいうと結構地味な作品である。これまでの、あのバニーメン・サウンドを期待すると、ちょっと肩透かしを喰らうほどである。しかし、地味ではあるが、しっかりと地に足の付いた、枯れた大人の男の味わいとアーシーな魅力に溢れた、滋味深い傑作と呼びたいアルバムなのである。
色んな意味でこれまでのバニーメン・サウンドとは一線を画しているといえると思うのだが、全編通して、フォーキーでメロウ〜スローな曲が多いことと、またこれまでにないほどにウィルのギターが控えめなことが挙げられると思う。あの研ぎ澄まされたギターが薄いのである。メロウな曲が多いから結果、抑えたギターになったということなのか分からないが、いつもの煌びやかなギター・サウンドを期待するウィルファンは物足りなさを感じるかもしれない。(もちろん、ギターは入っているし、ウィルはイアンと共に曲作りも行っており、大活躍である)
アッパーなロッキン・チューンやダンサブルなナンバーが少なく、じっくりと聴かせる曲調のモノが大半で、その結果、イアン・マッカロクの声、歌が前面に出た作品に仕上がっているのが本作の大きな特徴である。ここでの充分にリラックスしたイアンの歌声は豊かな表現力と確たる説得力をもって、こちらに迫ってくる。これが聴いていて実に心地良い。これは前作の再結成後、初のスタジオ・アルバム『EVERGREEN』が好評を得て、スマッシュ・ヒットを記録した結果生まれた余裕、自信だろうか。
作品中、1番驚いたのが5,”History Chimes” で、この曲ではピアノのみをバックにイアンが淡々と歌う佳曲である。このアプローチはおそらくバニーメンの歴史始まって以来、初の試みであると思う。これが非常にナチュラルで、素晴らしい1曲になっている。
また、3,”Get in the Car” 、8,”When It All Blows Over” はホーンとストリングス・アレンジが秀逸で、時折りビートルズを彷彿させる瞬間がある。
イアンの声は、若々しさが若干薄れて、ややザラついた声になっているものの、相変わらず魅力的だし、とにかく曲の良さ、バンドの安定感が際立つバニーメンの新境地を切り拓いた作品である。
最後に、彼らのアルバムのジャケット・ワークは毎回素晴らしいが、このジャケットも秀逸。遠い地平線に伸びていく、遮るものが何も無い1本道。その道をただひたすらに、前を向いて歩む孤高の男の生き様を見せつけるカッコ良さである。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。