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TOM WAITS/MULE VARIATIONS(トム・ウェイツ/ミュール・ヴァリエーションズ)

『MULE VARIATIONS』

Mule Variations』(ミュール・ヴァリエーションズ)は1999年、エピタフの姉妹レーベル、アンタイからリリースされた最初の一枚。「ベスト・コンテンポラリー・フォーク・アルバム」としてグラミー賞を獲得した、批評家、ファン双方から絶賛された傑作アルバムである。

トム・ウェイツ(Tom Waits、本名:Thomas Alan Waits、1949年12月7日生まれ)は、アメリカカリフォルニア出身のシンガーソングライター、俳優。1970年代初頭にロサンゼルスのクラブで歌うようになる。1971年、初のデモ・テープを制作。(この時の音源は、1990年代にコンピレーション・アルバム『Early Years Vol.1』(1991年)『同 Vol.2』(1993年)として世に出る)

〜アサイラム・レコード期〜 1972年、アサイラム・レコードと契約し、1973年にアルバム『Closing Time 』でデビュー。商業的には成功しなかったが、同作収録曲「オール55」をイーグルスがカヴァーして話題となった。1974年、ジャズ色を強めた2ndアルバム『The Heart Of Saturday Night』リリース。1975年、ライブ・アルバム『Nighthawks At The Diner』リリース。1976年、初のヨーロッパ・ツアーと3thアルバム『Small Change』で初めて全米アルバム・チャートのトップ100にランク・イン(最高位89位)。1977年1月には初の日本ツアーを行う。同年4hアルバム『Foreign Affairs 異国の出来事』リリース。ベット・ミドラーとのデュエットを披露した。1978年3月には、二度目の日本公演を行う。同年5thアルバム『Blue Valentine 』リリース。また、映画『パラダイス・アレイ』で俳優デビューを果たす。1980年、ピアノよりもギターを全面に出した6thアルバム『Heartattack and Vine』をリリース。この年、以後長きに渡ってトムの盟友となるベーシスト、グレッグ・コーエン、妻となるキャスリーン・ブレナン、映画監督のフランシス・フォード・コッポラらと出会う。1982年、トムが初めて音楽を担当した映画作品『One From The Heart』(監督:フランシス・フォード・コッポラ)公開。(トムは俳優としても端役で出演)クリスタル・ゲイルとの連名による同名のサウンド・トラック・アルバムはアカデミー編曲・歌曲賞にノミネートされた。1985年、ベスト盤 『Anthology』リリース。

〜アイランド・レコード期〜 1983年、実験的な音作りの7thアルバム『Swordfishtrombones 』リリース。1985年8thアルバム『Rain Dogs』キース・リチャーズの参加が話題となった。(翌年ウェイツはストーンズのアルバム『Dirty Work』に参加した)1986年、初主演映画『Down  By Law』公開。1987年9thアルバム『Franks Wild Years』リリース。アルバムに伴うツアーの模様は録音・録画され、1988年、ライブ・アルバム『Big Time』及び同名ドキュメンタリー映画として発表された。1992年、再びリチャーズと共演した10thアルバム『Bone Machine』で、最優秀オルタナティヴ・レコード賞を受賞。1993年、トムが音楽を担当したミュージカル11thアルバム『The Black Rider リリース。

〜アンタイ・レコード期〜 1999年、アンタイ・レコードに移籍、12thアルバム  『Mule Variations 』は初めて全米トップ40入りを果たし、ノルウェーのアルバム・チャートでは1位を獲得した。同作はグラミー賞のベスト・コンテンポラリー・フォーク・アルバム部門を受賞。2002年、13thアルバム『 Blood Money』 、14thアルバム『Alice』 (両方とも、トムとキャスリーンが関わったミュージカルの楽曲を再録音したもの)を同日にリリース。2004年、15thアルバム『Real Gone 』は、ピアノを一切使わないという新境地を見せた。2006年、アルバム未収録だった楽曲と新曲を合計54曲収録した3枚組CD16thアルバム 『Orphans: Brawlers, Bawlers & Bastards 』リリース。2009年ライブ・アルバム『Glitter and Doom Live』リリース。2011年、新録音のスタジオ・アルバムとしては7年振りの作品17thアルバム『Bad as Me 』 リリース。久しぶりのキース・リチャーズの参加を得た同作でデビュー以来初の全米トップ10入りを果たし、ノルウェーでは自身にとって2度目のアルバム・チャート1位獲得を果たした。2018年書籍『トム・ウェイツが語るトム・ウェイツ』出版。

『MULE VARIATIONS』

Track List

A1.Big in Japan 、A2.Lowside of the Road、A3.Hold On、A4Get Behind the Mule

B1.House Where Nobody Lives、B2.Cold Water、B3.Pony、B4What’s He Building?

C1.4Black Market Baby、C2Eyeball Kid、C3.Picture In A Frame C4.Chocolate Jesus

D1.Georgia Lee、D2.Filipino Box Spring Hog、D3.Take It with Me、D4.Come On Up To The House

 

Personnel Are

Tom Waits – vocals , The Voice , guitar , piano , organ , pump organ , percussion , chamberlin , optigan      Andrew Borger – drums , percussion     Ralph Carney – trumpet , saxophone, alto saxophone , bass clarinet, reeds      Les Claypool – bass       Greg Cohen – bass , percussion      Linda Deluca-Ghidossi – violin      Dalton Dillingham III – bass      Joe Gore – guitar      Chris Grady – trumpet      John Hammond – blues harp      Stephen Hodges – percussion      Smokey Hormel – guitar , dobro , chumbus, dousengoni      Jacquire King – programming , recording engineer, mixing     Larry LaLonde – guitar      Bryan “Brain” Mantia – drums      Christopher Marvin – drums      Charlie Musselwhite – blues harp      Nik Phelps – baritone saxophone      DJ M. Mark “The III Media” Reitman – turntable     Larry Rhodes – contrabassoon      Marc Ribot – guitar , lead guitar , guitar solo      Jeff Sloan – percussion      Larry Taylor – bass , guitar , rhythm guitar      Wings Over Jordan Gospel, Bali Eternal – turntable samples

Mule Variations』は1999年、エピタフの姉妹レーベル、アンタイからリリースされた最初の一枚。「ベスト・コンテンポラリー・フォーク・アルバム」としてグラミー賞を獲得した、批評家、ファン双方から絶賛された傑作アルバムである。

このアルバムに入っている曲を、ウェイツは「耳で聴く映画」と説明する。「テープレコーダーをポケットに入れて歩き回っている。車の中で録音して、それを聞いたり、モーテルの部屋で拳骨でタンスを叩いてリズムをとってそれを録音したり。ある意味、いつでも気に入ったものをレコーディングしいるよ」

前作『Black Rider』から6年、沈黙を守り続けたウェイツだが、その6年間は決して羽休めをしていたわけではなかった。以前にも増して不思議な、名前を聞くのも初めての楽器が数々登場し、これでもかとばかりに詰め込まれているにも関わらず、ここには安らぎさえ感じるような、ウェイツにしか作り得ない心震わせる新たな音がある。前人未到の域に達したウェイツ最高傑作の1枚である。

Side  A

アルバムのオープニングを飾る A1.Big in Japan はいきなりウェイツ自身によるボイス・パーカッション、これが独特のグルーブを生み出している。不穏なベース・ラインと直線的なギターも良い。 酔っ払いの呟きのような A2.Lowside of the Road、いくつか重なる不思議な響きのパーカッションと謎の弦楽器(?)が奥行きを作る。 おそらくマーク・リーボウであろう、心地良いリズム・ギターの A3.Hold On、曲調はこれまでのウェイツにもありそうなものだが、ここでは極端に打楽器が排除されており、押し殺したように歌うウェイツの声が際立つ。 ギター、ベース、パーカッションが奏でるシンプルなワン・コードの A4Get Behind the Mule 、これだけの楽器なのになんと芳醇なことか。チャーリー・マッスルホワイトのハープが実に深遠な響き。

Side B

カントリー・フレイバー漂うスロー・ナンバー B1.House Where Nobody Livesは、リーボウのギターが実に奥ゆかしく味がある。 浴室で鍋を叩きながら歌っているかのようなB2.Cold Waterでは、ウェイツが楽しそうに朗々と歌う。 スモーキー・ハーメルの爪弾くドブロが心地良くひびく B3.Pony。ここでのマッスルホワイトのハープも実に良い。 緊張感漂う効果音をバックにストーリー・テラー、ウェイツ本領発揮の B4What’s He Building?

Side C

メタリックなパーカッションとヴィブラフォンがノワールな雰囲気プンプンのC1.4Black Market Baby。 この曲もボイス・パーカッションか、C2Eyeball Kid で、もはや声も打楽器にしてしまう男、ウェイツ。いつ終わるとも知れぬ民族楽器風なパーカッションが延々と鳴り続ける。 柔らかなピアノの響き、ウェイツの弾き語りによる C3.Picture In A Frame 、長く付き添ってきたグレッグ・コーエンのベースがウェイツのピアノに寄り添う。単弦弾きのシンプルなトラックをバックにウェイツが歌うブルージーな C4.Chocolate Jesus、古いチェスの音源を聴いているかのよう。

Side D

ウェイツのピアノとディリンガムのベースだけの美しいスロー・バラード D1.Georgia Lee。 破壊的なパーカッションの上でウェイツが吠える D2.Filipino Box Spring Hog、ここではウェイツのラップ調の声も、ギターですら打楽器のようだ。時折り入るブルース・ハープが華を添える。 このアルバムでのウェイツのピアノはとても響きが柔らかく耳当たりが良い。この曲もそんな優しいピアノの音D3.Take It with Meはウェイツのピアノのみの弾き語り。 力強いウェイツのヴォーカルが圧倒的な存在感を放つ、アルバム・ラストの D4.Come On Up To The House が、クロージング・ナンバー。

自分の乏しいボキャブラリーでは、どう形容しようもない音で溢れる、実験的で意欲溢れる傑作アルバムである。

 

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ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。  またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ他)絵画に興味ある方はご覧ください。

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