TOM WAITS/RAIN DOGS(トム・ウェイツ/レイン・ドッグズ) Vinyl Diary
『RAIN DOGS』トム・ウェイツ1985年発表の名作。評論家やミュージシャン筋からの評価が高く、ウェイツを紹介する時には大抵名前が挙がってくる作品で、ジャケットも見覚えのある方が多いと思う。
トム・ウェイツ(Tom Waits、本名:Thomas Alan Waits、1949年12月7日生まれ)は、アメリカカリフォルニア出身のシンガーソングライター、俳優。1970年代初頭にロサンゼルスのクラブで歌うようになる。1971年、初のデモ・テープを制作。(この時の音源は、1990年代にコンピレーション・アルバム『Early Years Vol.1』(1991年)『同 Vol.2』(1993年)として世に出る)
〜アサイラム・レコード期〜 1972年、アサイラム・レコードと契約し、1973年にアルバム『Closing Time 』でデビュー。商業的には成功しなかったが、同作収録曲「オール55」をイーグルスがカヴァーして話題となった。1974年、ジャズ色を強めた2ndアルバム『The Heart Of Saturday Night』リリース。1975年、ライブ・アルバム『Nighthawks At The Diner』リリース。1976年、初のヨーロッパ・ツアーと3thアルバム『Small Change』で初めて全米アルバム・チャートのトップ100にランク・イン(最高位89位)。1977年1月には初の日本ツアーを行う。同年4hアルバム『Foreign Affairs 異国の出来事』リリース。ベット・ミドラーとのデュエットを披露した。1978年3月には、二度目の日本公演を行う。同年5thアルバム『Blue Valentine 』リリース。また、映画『パラダイス・アレイ』で俳優デビューを果たす。1980年、ピアノよりもギターを全面に出した6thアルバム『Heartattack and Vine』をリリース。この年、以後長きに渡ってトムの盟友となるベーシスト、グレッグ・コーエン、妻となるキャスリーン・ブレナン、映画監督のフランシス・フォード・コッポラらと出会う。1982年、トムが初めて音楽を担当した映画作品『One From The Heart』(監督:フランシス・フォード・コッポラ)公開。(トムは俳優としても端役で出演)クリスタル・ゲイルとの連名による同名のサウンド・トラック・アルバムはアカデミー編曲・歌曲賞にノミネートされた。1985年、ベスト盤 『Anthology』リリース。
〜アイランド・レコード期〜 1983年、実験的な音作りの7thアルバム『Swordfishtrombones 』リリース。1985年8thアルバム『Rain Dogs』キース・リチャーズの参加が話題となった。(翌年ウェイツはストーンズのアルバム『Dirty Work』に参加した)1986年、初主演映画『Down By Law』公開。1987年9thアルバム『Franks Wild Years』リリース。アルバムに伴うツアーの模様は録音・録画され、1988年、ライブ・アルバム『Big Time』及び同名ドキュメンタリー映画として発表された。1992年、再びリチャーズと共演した10thアルバム『Bone Machine』で、最優秀オルタナティヴ・レコード賞を受賞。1993年、トムが音楽を担当したミュージカル11thアルバム『The Black Rider』 リリース。
〜アンタイ・レコード期〜 1999年、アンタイ・レコードに移籍、12thアルバム『Mule Variations 』は初めて全米トップ40入りを果たし、ノルウェーのアルバム・チャートでは1位を獲得した。同作はグラミー賞のベスト・コンテンポラリー・フォーク・アルバム部門を受賞。2002年、13thアルバム『 Blood Money』 、14thアルバム『Alice』 (両方とも、トムとキャスリーンが関わったミュージカルの楽曲を再録音したもの)を同日にリリース。2004年、15thアルバム『Real Gone 』は、ピアノを一切使わないという新境地を見せた。2006年、アルバム未収録だった楽曲と新曲を合計54曲収録した3枚組CD16thアルバム 『Orphans: Brawlers, Bawlers & Bastards 』リリース。2009年ライブ・アルバム『Glitter and Doom Live』リリース。2011年、新録音のスタジオ・アルバムとしては7年振りの作品17thアルバム『Bad as Me 』 リリース。久しぶりのキース・リチャーズの参加を得た同作でデビュー以来初の全米トップ10入りを果たし、ノルウェーでは自身にとって2度目のアルバム・チャート1位獲得を果たした。2018年書籍『トム・ウェイツが語るトム・ウェイツ』出版。
『RAIN DOGS』
Track List
A1.Singapore 、2.Clap Hands 、3.Cemetery Polka 、4.Jockey Full Of Bourbon 、5.Tango Till They’re Sore 、6.Big Black Mariah 、7.Diamonds & Gold 、8.Hang Down Your Head 、9.Time
B1.Rain Dogs 、2.Midtown (Instrumental) 、3.9th & Hennepin 、4.Gun Street Girl、 5.Union Square 、6.Blind Love 、7.Walking Spanish 、8.Downtown Train 、9.Bride Of Rain Dog (Instrumental) 、10. Anywhere I Lay My Head
Personnel
Tom Waits – vocals ,guitar ,organ,piano.harmonium,banjo 、Michael Blair – percussion.marimba,drums,congas,bowed saw,parade drum 、Stephen Hodges – drums ,parade drum 、Larry Taylor – double bass ,bass 、Mark Ribot – guitar 、“Hollywood” Paul Litteral – trumpet 、Bobby Previte – percussion ,marimba 、William Schimmel – accordion 、Bob Funk – trombone 、Ralph Carney – baritone,saxophone, ,clarinet 、Greg Cohen – double bass 、Chris Spedding – guitar 、Tony Garnier – double bass 、Keith Richards – guitar ,backing vocals 、Robert Musso – banjo 、Arno Hecht – tenor saxophone、Crispin Cioe – saxophone 、Robert Quine – guitar 、Ross Levinson – violin 、John Lurie – alto saxophone, G.E.Smith – guitar 、Mickey Curry – drums 、Tony Levin – bass 、Robbie Kilgore – organ 、
これだけ多作であるに関わらずトム・ウェイツの作品には駄作がない。1枚1枚渾身の力で取り組んでいるのが伝わる好盤ばかりである。そんな中でも本作は全19曲の重量級のアルバムである。彼の音楽はデビューして最初に所属したアサイラム期と79年末に移籍したアイランド期でかなり趣が変わる。デビューして約6年間過ごしたアサイラムの頃は、ジャズ、ブルースをベースに、スポークン・ワードを加えて独自の世界観を作り上げていった。アイランドに移ってからはそこに更に雑食性、オルタネイティブな風合いをプラスしていく。このアルバムは移籍後1枚目”ソードフィッシュ・トロンボーン“に次ぐアルバムとなる。またレイン・ドッグの次の作品”フランクス・ワイルド・イヤーズ”の3つを合わせてフランク3部作と呼ばれている(フランクは幼少期に別離したウェイツの実父の名前)
このアルバムの特徴としてはギターに比重が置かれていることが挙げられる。ウェイツ本人も数曲でオルガン、ピアノを披露する程度で、殆どの曲でギターを弾いている。また以下に紹介する参加ギタリストが豪華なのも見逃せない。キース・リチャーズはもちろんローリング・ストーンズのギタリスト。この人の客演はかなり珍しいのだが、ウェイツからのラブ・コールによって競演が実現したらしい。レコーディングの際には、トラックに機材を満載にして夜の9時か10時だかにスタジオに現れて、参加した3曲を撮り終えたのは朝4時頃だったようだ。クリス・スペディングはエリオット・マーフィーやロバート・ゴードンらとの活動で有名な職人的な技巧派のギタリスト。ロバート・クワインはリチャード・ヘル&ザ・ヴォイドイズやルー・リードのバンドへの参加で有名な個性的な音色を奏でるギタリスト。マーク・リーボウは(当時)ラウンジ・リザーズのギタリスト。(シオンの作品にも参加したことがある名手)。同グループからはアルト・サックスでジョン・ルーリーも参加している。以上のようなギタリストがアルバムに華を添えている。
Side A
アヴァンギャルドなリーボウのギターの上でウェイツが吠えるエキゾチックなオープニング・ナンバー、1.「Singapore」。 マリンバとパーカッションが奏でる妖しげな 2、「Clap Hands 」。 まるで演説をしているかのようなウェイツのヴォーカルのとポルカのリズムが混ざる 3.Cemetery Polka 。 映画ダウン・バイ・ローの冒頭で流れる、個人的には名曲と位置付ける4、「Jockey Full Of Bourbon 」。 調子っ外れなウェイツのピアノが楽しい 5.Tango Till They’re Sore 。 ルーズなギターを披露するキース参加の 6、「Big Black Mariah 」。 マーク・リーボウのアウトするギターが楽しめる 7、「Diamonds & Gold 」はパーカッシブなワルツ。 アルバムの中では比較的オーソドックスな、心に沁みるミディアム・ナンバー 8.「Hang Down Your Head 」。 アコースティック・ギターとアコーディオンの響きが美しいバラード 9.Time。
Side B
導入部のバンドネオン(?)が意表を突く表題曲1「Rain Dogs」。 ジプシー・バンドのようなスピード感と賑やかなホーンで聴かせるインストルメンタル 2.Midtown 。 抽象的なピアノとマリンバを背景にウェイツのポエトリーが聴けるアヴァンギャルドなジャズ 3、「9th & Hennepin 」。 ウェイツがバンジョーを弾くオルタナ・カントリー 4、「Gun Street Girl」。 キースのロックンロール・ギターが楽しめる5、「Union Square 」。 感動的なカントリー風バラード 6、「Blind Love 」。 ジョン・ルーリーのサックスがいい味のブルース、7、「Walking Spanish 」。 多くのカバー・バージョンを生んだ名曲8、「Downtown Train 」。9.Bride Of Rain Dog、はB1の短いインストルメンタル・ヴァージョン。 高らかに鳴るホーンをバックに振り絞るようにウェイツが歌う10. Anywhere I Lay My Head、がクロージング・ナンバー。陽気なマーチング・バンドの演奏でフェード・アウト。
聴きどころ満載捨て曲なしの強力な全19曲。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ他)絵画に興味ある方はご覧ください。