ECHO & THE BUNNYMEN/OCEAN RAIN (エコー&ザ・バニーメン/オーシャン・レイン) Vinyl Diary
『OCEAN RAIN』『OCEAN RAIN』は1984年に発表されたECHO & THE BUNNYMENの傑作4thアルバムである。
エコー&ザ・バニーメン
イアン・マッカロク – ヴォーカル、ギター
ブルージーで粘りがありエモーショナルな声、表現力。伸びのある太い声は時々ホーンのように聴こえたりする。公言する影響を受けたミュージシャン、アーティストはジム・モリソン、ヴェルヴェッツ、デビッド・ボウイ、レナード・コーエンなど。ロンドンよりもニューヨーク・パンク(テレヴィジョン、パティ・スミス他)からの影響が強いそうだ。
ウィル・サージェント – ギター
リバーブなど空間系のエフェクターを巧みに操るギタリスト。フェンダー、グレッチ系の粒立ちの良いギターの音色と攻撃的なハイ・テンションのキレの良いカッティングが持ち味。現在もイアンと共に活動を続けている。
レス・パティスン – ベース
竹を割ったような正確なフレージング、ベースだけでも曲を引っ張れるような個性的かつ立体的なベース・リフが作れる職人。解散した後の復活1作目には参加したが、その後は家庭の事情により不参加(メンバーとの不和ではない)
ビート・デイ・フレイタス – ドラムス
メンバー募集により最後にバンドに加入したドラマー(ピート加入までバンドは生ドラムの代わりにドラムマシンを代用していた、ピートが加入した当初はマシンを使っていたバニーメンを支持する声もあったらしい)セルフタイトルの5作目「ECHO & THE BUNNYMEN」を完成させた後、バイク事故により死亡。
ビートルズを産んだリヴァプール出身のバンドである。
アルバム・ディスコグラフィー
1980年 1st『CROCODILES』 全英17位。評論家の称賛を受け、イギリスでトップ20入りを果たす
1981年 2nd 『HEAVEN UP HERE』全英10位、全米184位。イギリスのアルバムチャートで10位に達し、NME紙の読者人気投票で年間ベスト・アルバムに選ばれた
1983年 3rd『PORCUPINE』全英2位、全米137位。先行シングルの“The Cutter”がイギリストップ10に入り、満を持して発表されたアルバムは英チャート2位にまで上り詰める
1984年4th 『OCEAN RAIN』全英4位、全米87位。“Killing Moon”、“Silver”、“Seven Seas”などのヒット曲が生み出された。また、同年4月には初来日も果たした
1985年 『SONGS TO LEARN & SING』(シングルを集めたコンピレーション・アルバム)リリース
1987年 5th『ECHO & THE BUNNYMEN』全英4位、全米51位
1988年 『NEW LIVE AND RARE/まぼろしの世界』(12”+LIVEレア・トラック集)リリース
イアンは『Echo & the Bunnymen』を最後にソロアーティストに転身するため脱退。ドラムのピート・ディ・フレイタスが交通事故により他界する
1990年 6th『Reverberation』全英19位
残されたメンバーのサージェントとパティスンは、リードシンガーとしてノエル・バークを、ドラマーとしてデイモン・リースを、キーボーディストとしてジェイク・ブロックマンを参加させ活動を継続。新体制で『Reverberation』をリリースしたが評論家には酷評され、マッカロクからも「Echo & the Bogusmen (偽者ども)」と揶揄される。商業的にも失敗に終わり、バンドは1993年5月に解散した。
1994年 二枚のソロアルバムを発表した後、マッカロクは新プロジェクトElectrafixionで再びサージェントと手を組み、セルフ・タイトルのアルバムをリリースするも単発で終わる。
1997年 『Evergreen』全英8位。マッカロクとサージェントはパティスンと一緒にエコー&ザ・バニーメンを再始動させた。(3人が集うのは5th以来10年ぶり)アルバムは批評家に熱狂的に支持され、シングル“Nothing Lasts Forever”はイギリスでトップ10に入った。
1999年8th 『What Are You Going to Do with Your Life? 』全英21位。パティスンが2度目の脱退(家庭の事情による脱退で、仲違いしたわけではない)をしたが、マッカロクとサージェントは新たにメンバーを加え活動を続ける。
2001年 9th『Flowers」 全英56位
2005年 10th『Siberia』全英83位
2009年11th 『The Fountain』 全英63位
2014年 12th『Meteorites』全英37位、全米138位
2019年 『 JOHN PEEL SESSIONS1979~1983』(スタジオ・ライブ・コンピレーション)リリース
『Ocean Rain』
Track List
A-1″Silver”、A-2″Nocturnal Me”、A-3 “Crystal Days”、A-4″The Yo Yo Man”、A-5″Thorn of Crowns”
B-1 “The Killing Moon”、B-2″Seven Seas”、B-3″My Kingdom”、B-4 “Ocean Rain”
ここに紹介するのは4枚目のオリジナル・スタジオ・アルバムである。ジャケットをそのまま音にしたような、あまりにも清冽で美しいアルバム、ほとんどの批評家がバンドの最高傑作に位置付ける作品かと思う。地元リヴァプールとパリでレコーディングされたこのアルバムからは、「Silver」、「Seven Seas」そして全英9位の「The Killing Moon」が生まれた。また印象的なアルバム・カヴァーは写真家Brian GriffinがコーンウォールのCarnglaze Cavernsで撮影したもの。(ちなみにGriffinはこれまでの4作すべてのアルバム・カヴァーの撮影を担当している)
日本盤のライナーにこのようなイアンの言葉がある。「基本的に僕らは”いい曲は、必ずアコースティック・ギターで弾けるものだ”というコンセプトを持っている」。この言葉からも分かるように、スタジオワークに頼らず、シンプルに歌の良さを引き出すようなやり方で1曲1曲作られたのだと思う。これまでの演奏スタイルであるエレクトリックな音の厚みはいくらかスッキリした印象で、適度な隙間がある、ある意味アーシーな手触りの作品である。それから、この作品には、Adam Peters指揮による35人編成のオーケストラもフィーチャーされていることも大きなチャレンジの一つで、アルバムをよりヨーロッパ的な耽美な世界に連れ行くことに成功していると思う。
Side A
A-1“Silver”はアコースティック・ギターのイントロに導かれダンサブルなリズムが心地良いオープニング・ナンバー。歌のバッキングとギターソロのバッキングでストリングスの入れ方をはっきりと変えているアレンジがニクい。A-2“Nocturnal Me”は、ストリングスとホーンのアレンジが素晴らしく、荘厳な1曲に仕上げられている。一転してリラックスして聴けるA-3“Crystal Days”はポップなナンバーで新境地を開いた感がある。イアンのリズム・ギターがカッコいいし、ウィルのギターリフは音色がマージー・ビートしている。ブラシを使っていると思われるドラムがドライブするグルービーなA-4“The Yo Yo Man”、イアンのツイン・ボーカルも凝っていて凄みすら感じる。A面ラストを飾るA-5“Thorn of Crowns”はオリエンタルなムードのトリッキーなリズムの曲。調性も無調っぽくフリーキーな演奏。なのに統制の取れた演奏は、唯一無比としかいいようがない。鬼気迫るイアンのボーカルも素晴らしい。
Side B
B-1“The Killing Moon”、ミディアム・ナンバーのヒットシングル。ソロ部分のギターとベースの対位が何度聞いても感動してしまう。軽快なテンポのB-2“Seven Seas”もヒットシングル。この曲もA-3の流れか、レイドバックしたリバプールライクなギターリフ。(リッケンバッカーを使用しているのだろうか)。印象的なベースラインのB-3“My Kingdom”はイアンのユニゾンのツイン・ボーカルがクールな1曲。音のメリハリ、明暗、陰陽の対比が問答無用のカッコ良さ。B-4“Ocean Rain”はブラシとウッド・ベースを使用しているのか、音があたたかい。アルバムラストを飾るに相応しい、全てを洗い流していくような美しいクロージング・ナンバー。イアンの渾身のボーカルがいつまでも耳に残る名曲。
通して聴くと整合感があり、コンセプト・アルバムのような感覚も覚える、溜息の出るような美しさ、あっという間の37分である。
コンピレーション・アルバム『SONGS TO LEARN & SING』に続く
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。