ECHO & THE BUNNYMEN / HEAVEN UP HERE(エコー&ザ・バニーメン/ヘブン・アップ・ヒア) Vinyl Diary
『HEAVEN UP HERE』1981年リリースファンや批評家、メディアから高い評価を集めた2ndアルバム
エコー&ザ・バニーメン
イアン・マッカロク – ヴォーカル、ギター
ブルージーで粘りがありエモーショナルな声、表現力。伸びのある太い声は時々ホーンのように聴こえたりする。公言する影響を受けたミュージシャン、アーティストはジム・モリソン、ヴェルヴェッツ、デビッド・ボウイ、レナード・コーエンなど。ロンドンよりもニューヨーク・パンク(テレヴィジョン、パティ・スミス他)からの影響が強いそうだ。
ウィル・サージェント – ギター
リバーブなど空間系のエフェクターを巧みに操るギタリスト。フェンダー、グレッチ系の粒立ちの良いギターの音色と攻撃的なハイ・テンションのキレの良いカッティングが持ち味。現在もイアンと共に活動を続けている。
レス・パティスン – ベース
竹を割ったような正確なフレージング、ベースだけでも曲を引っ張れるような個性的かつ立体的なベース・リフが作れる職人。解散した後の復活1作目には参加したが、その後は家庭の事情により不参加(メンバーとの不和ではない)
ビート・デイ・フレイタス – ドラムス
メンバー募集により最後にバンドに加入したドラマー(ピート加入までバンドは生ドラムの代わりにドラムマシンを代用していた、ピートが加入した当初はマシンを使っていたバニーメンを支持する声もあったらしい)セルフタイトルの5作目「ECHO & THE BUNNYMEN」を完成させた後、バイク事故により死亡。
ビートルズを産んだリヴァプール出身のバンドである。
アルバム・ディスコグラフィー
1980年 1st『CROCODILES』 全英17位。評論家の称賛を受け、イギリスでトップ20入りを果たす
1981年 2nd 『HEAVEN UP HERE』 全英10位、全米184位。イギリスのアルバムチャートで10位に達し、NME紙の読者人気投票で年間ベスト・アルバムに選ばれた
1983年 3rd『PORCUPINE』全英2位、全米137位。先行シングルの“The Cutter”がイギリストップ10に入り、満を持して発表されたアルバムは英チャート2位にまで上り詰める
1984年4th 『OCEAN RAIN』全英4位、全米87位。“Killing Moon”、“Silver”、“Seven Seas”などのヒット曲が生み出された。また、同年4月には初来日も果たした
1985年 『SONGS TO LEARN & SING』(シングルを集めたコンピレーション・アルバム)リリース
1987年 5th『ECHO & THE BUNNYMEN』全英4位、全米51位
1988年 『NEW LIVE AND RARE/まぼろしの世界』(12”+LIVEレア・トラック集)リリース
イアンは『Echo & the Bunnymen』を最後にソロアーティストに転身するため脱退。ドラムのピート・ディ・フレイタスが交通事故により他界する
1990年 6th『Reverberation』全英19位
残されたメンバーのサージェントとパティスンは、リードシンガーとしてノエル・バークを、ドラマーとしてデイモン・リースを、キーボーディストとしてジェイク・ブロックマンを参加させ活動を継続。新体制で『Reverberation』をリリースしたが評論家には酷評され、マッカロクからも「Echo & the Bogusmen (偽者ども)」と揶揄される。商業的にも失敗に終わり、バンドは1993年5月に解散した。
1994年 二枚のソロアルバムを発表した後、マッカロクは新プロジェクトElectrafixionで再びサージェントと手を組み、セルフ・タイトルのアルバムをリリースするも単発で終わる。
1997年 『Evergreen』全英8位。マッカロクとサージェントはパティスンと一緒にエコー&ザ・バニーメンを再始動させた。(3人が集うのは5th以来10年ぶり)アルバムは批評家に熱狂的に支持され、シングル“Nothing Lasts Forever”はイギリスでトップ10に入った。
1999年8th 『What Are You Going to Do with Your Life? 』全英21位。パティスンが2度目の脱退(家庭の事情による脱退で、仲違いしたわけではない)をしたが、マッカロクとサージェントは新たにメンバーを加え活動を続ける。
2001年 9th『Flowers」 全英56位
2005年 10th『Siberia』全英83位
2009年11th 『The Fountain』 全英63位
2014年 12th『Meteorites』全英37位、全米138位
2019年『 JOHN PEEL SESSIONS1979~1983』(スタジオ・ライブ・コンピレーション)リリース
『Heaven Up Here』
Track List
A-1 Show Of Strength、A-2 With A Hip、A-3 Over The Wall、A-4 It Was A Pleasure、A-5 A Promise
B-1 Heaven Up Here、B-2 The Disease、B-3 All My Colours、B-4 No Dark Things、B-5 Turquoise Days、B-6 All I Want
1stアルバムリリース後、バクストンのPavillion Gardensでのライヴを収録した『SHINE SO HARD』EPをリリースした彼らは、その同じ年に本作『HEAVEN UP HERE』を発表。日本盤ライナー(当時モノ)には「日本、アメリカではまだまだ知名度が低い」と記述されているが、本国イギリスではこのアルバムは、エコー&ザ・バニーメンにとって初めてのTOP10であり、NME誌の1981年のベスト・アルバム賞を獲得した記念碑的作品である。前作に比べややダークなアルバムとされるが、ファンや批評家、メディアから高い評価を集めた。アルバム全体を覆うトーンの整合感、完成度が群を抜いている。
Side A
不穏な冷んやりとしたイントロのギターから一気に熱を帯びる、マッカロクのヴォーカルがエモーショナルな、A-1 「Show Of Strength」がオープニング・ナンバー、フレイタスのドラムが力強い。 シンプルなパティスンのベースが曲を引っ張るA-2 With A Hip は抽象的なサージェントのギターも光る。 当時、ライブのオープニング・ナンバーとしてたびたびプレイされた、A-3 「Over The Wall」は、マックの瞬発力のあるヴォーカルが凄まじく、またフレイタスのラストへ向けての魂のこもったドラムが筆舌に尽くしがたく素晴らしい、本作のベスト・トラックに、挙げたい。A-4 「It Was A Pleasure」はファンク・チューン、シンプルな歌をマッカロクのダブル・トラックで聴き飽きないものにしている。 シンプルなミディアム・テンポの8ビート、A-5 A Promiseはマッカロクのホーンのようにソウルフルなヴォーカルを堪能出来る。
Side B
エキゾチックなサージェントのギターが曲を引っ張るタイトル・トラック、B-1 「Heaven Up Here」はバンドの攻撃的、アグレッシブなプレーが聴きもの。 ギターだけをバックにマッカロクが歌いはじめるB-2 「The Disease」は後半は無調のような曲調になる呪術的で不思議な曲。 ジンボのタイトルでも知られ、ドアーズを想起させるB-3 「All My Colours」は、アコースティック・ギター、リコーダー、フレイタスのプリミティブなドラムがバニーメン独自の世界観を構築している、マッカロクの伸びやかな声も素晴らしい。 一転してやや明るい雰囲気のB-4 No Dark Things では単純にエッジの効いた2本のギターの絡みを楽しみたい。 凛とした佇まいのミディアム・テンポのナンバー、B-5 「Turquoise Days」は、ギターで作られる音の広がりが美しい。 アレンジの妙と各自の表現力で様々な表情を見せるB-6 「All I Want」がクロージング・ナンバー。メロディの変化はあまり無いものの、1曲の中に山あり谷ありの大きな波、起伏があり最後まで緊張感を留めた状態でアルバムは終わる。
自分たちのカラーを完全に確立した、いつまでも色褪せない作品であり、本作を彼らのベストとする向きも多いであろうアルバムである。
3rd『PORCUPINE』に続く。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。