THE CRAMPS / FLAMEJOB (クランプス / フレームジョブ) VINYL DIARY

『FLAMEJOB』
『Flamejob』(フレームジョブ)は、ザ・クランプスによる6枚目のスタジオアルバム
THE CRAMPS HISTORY
1972年 ラックス・インテリアとポイズン・アイビー、カリフォルニア州サクラメントで出会う。
1976年クランプス結成。NYパンク・シーンの中心CBGBに参入し、精力的にライブを行う。
1980 アルバム『Songs the Lord Taught Us』 でデビュー。ギターにブライアン・グレゴリー、ドラムスにニック・ノックス。Vo + G×2 + Ds という4人編成。
1981 2ndアルバム『Psychedelic Jungle』 ブライアン・グレゴリーに代わりガン・クラブのキッド・コンゴ・パワーズがギタリストとして加入。
1986 3rdアルバム『A Date with Elvis 』このアルバムからセカンド・ギターに代わりベースを導入。適切なプレイヤーが見つからずポイズン・アイビーが一時的にベースも兼任する。シングル『キャン・ユア・プッシー・ドゥ・ザ・ドッグ?」が全英で初のチャート・インを記録し、アルバムもヨーロッパでは25万枚のセールスを記録した。
1990 4thアルバム『Stay Sick』ベースにキャンディ・デル・マーが加入。アルバムは、1990年2月の全英アルバム・チャートで1週間62位を記録、シングル『ビキニ・ガールズ・ウィズ・マシンガンズ」で初めて全英トップ40入りを果たした。
1991 5thアルバム『Look Mom No Head! 』ベースにスリム・チャンス、ドラムスにジム・スクラヴノスが加入。A.5 “Miniskirt Blues”にイギー・ポップがヴォーカルで参加。
1994 6thアルバム『Flamejob』ドラムスにハリー・ドラムディニィが加入。ラックスとポイズン・アイヴィーによるセルフ・プロデュース作品。
1997 7thアルバム『Big Beat from Badsville』カヴァー・デザインはラックスによるもの。
2003 8thアルバム『Fiends of Dope Island』ベースにチョッパー・フランクリンが加入。
2006年の夏ヨーロッパ、同年11月4日、アリゾナ州マーキー・シアターでのパフォーマンスが最後のライブとなった。
2009年2月4日、ラックス・インテリア、大動脈解離を患い、グレンデール記念病院で亡くなる。
(*アルバムはスタジオ・アルバムのみ表記)
『FLAMEJOB』
Track List
Side one : 1.”Mean Machine”、2. “Ultra Twist!”、3. “Let’s Get Fucked Up”、4. “Nest of the Cuckoo Bird”、5. “I’m Customized”、6. “Sado County Auto Show”、7. “Naked Girl Falling Down the Stairs”
Side two : 1. “How Come You Do Me?”、2. “Inside Out and Upside Down (With You)”、3. “Trapped Love”(Jimmy Testo) 、4. ”Swing the Big Eyed Rabbit” 、5. “Strange Love”(Jerry West) 、6. ”Blues, Blues, Blues”(Hayden Thompson) 、7. ”Sinners”(Freddie Alridge) 、8. “Route 66 (Get Your Kicks On)” 、
The Cramps : Lux Interior – vocals、Poison Ivy Rorschach – guitars, theremin、Slim Chance – bass guitar、Harry Drumdini – drums
~ABOUT THE CRAMPS~
ザ・クランプスは、シンガーのラックス・インテリアとギタリストのポイズン・アイビーの夫婦を中心に1976年に結成され、2009年まで活動した、激しいライブ・アクトでカルト的な人気を誇ったアメリカのバンドである。
その特異な音、ヴィジュアル・イメージからガレージ、サイコビリーといった枠組みで語られる。2人以外のメンバーはアルバムごとに流動的。結成してしばらくはヴォーカル+ツイン・ギター+ドラムスという編成でプレーしていた。(後にヴォーカル+ギター+ベース+ドラムスの編成)
パンクロックの要素とロカビリーを融合させた、サイコビリーとカテゴライズされることについて。ポイズン・アイビーは、自らサイコビリー・バンドだと名乗ったことはなく、初期のチラシでは「ロカビリー ブードゥー」という用語を使用していたという。また過去に「ブルースとR&Bからの影響が大きく、ロカビリーもブルースにルーツがあるため、我々は自分たちをブルース・バンドだとも考えている」と発言しているのも大変興味深い。
その他、B級映画、ホラー・ムービー、初期のロカビリー、リンク・レイやヘイゼル・アドキンスのようなR&Bや R&R、ベンチャーズやディック・デイルなどのサーフ・ミュージック、ザ・トラッシュメン、ザ・ソニックスのような1960年代のガレージ・ロック・アーティストに多大な影響を受けていた。またラモーンズやスクリーミン・J・ホーキンスからの影響も公言していたようである。
NYパンクを代表するミュージシャン、テレヴィジョンやミンク・デヴィル、ジョニー・サンダースと同様にクランプスも本国アメリカよりもヨーロッパで絶大な人気を誇った。例えば、1984年のヨーロッパ・ツアーでは、ハマースミス・パレでの4夜が完売。翌1985年、同じくロンドンのハマースミスで6晩、オデオンで3夜の他、イギリス全土でソールドアウトの会場が続出した。
『FLAMEJOB』
さて、本作『Flamejob』(フレームジョブ)は1994年にクリエイションからリリースされたクランプスの6枚目のスタジオ・アルバムである。ラックス・インテリアとポイズン・アイビーがプロデュースもつとめた。またカヴァー写真はラックスが提供したものである。
どこを切ってもロックンロール印、ルーツ・ミュージックへの愛とリスペクトに溢れたアルバム。時にドスを効かせ、時にコミカルに様々なキャラクターで楽しませるラックス・インテリアのヴォーカル、リバーブやトレモロを駆使し、グレッチのポテンシャルを存分に引き出すポイズン・アイビーのギター、ゴリゴリのベースとタイトなドラムのリズム隊。重いビートのオープニング・ナンバー、A1. “Mean Machine” からラスト、ロックンロールの定番曲、B8. “Route 66 (Get Your Kicks On)” があっという間の45分間である。
気を衒った演奏や小手先のギミックに頼らない、実に端正に丁寧に作り込まれた作品だと思う。特に シングル・カットされた A2. “Ultra Twist!” はポイズン・アイビーのギターのキレ、ラックス・インテリアのクールな歌いっぷり、バンドのグルーブ等、筆舌に尽くせぬカッコ良さ。A5 “I’m Customized” は、”シェイキン・オール・オーバー” が元ネタであろうシンプルな3コードのナンバー。エディ・コクラン風、どストレートなロックンロール A6 “Sado County Auto Show” やアルバム中、1番パンキッシュな B2 “Inside Out and Upside Down (With You)” など聴きどころ満載である。
後半に収められたカバー曲について解説するとB3 “Trapped Love” は、これぞオリジナル・ロカビリーといった雰囲気のキース・クールヴェールのロカビリー・ナンバー。アコースティック色濃い原曲に対しクランプスは全体にファズを効かせサイケデリックな風合いにプレーしている。B5 “Strange Love” は、味わいのある変拍子のブルースで、オリジナルはスリム・ハーポ。クランプスは比較的原曲に忠実な演奏をしており、派手さのないブルース・ナンバーではあるが実に潔く端正な佇まい。B6 ”Blues, Blues, Blues” は、サン・レコードのロカビリアンで美声の持ち主、ヘイデン・トンプソンがオリジナル。クランプスはテンポ・アップしてラウドにワイルドに彼ららしい演奏を披露。B7”Sinners” は、原曲はフレディ& ザ・ヒッチハイカーズ。オリジナルがかなりホラー風なタッチに仕上がっている妖しさなので、クランプスは当然ハマっている快作。B8 “Route 66 (Get Your Kicks On)” ロックンロール・バンドにとっては、定番といえるボビー・トループのナンバー。ありがちな演奏かと思いきや、クランプスは見事に裏切ってくれており、他のバンドにはない斬新な解釈でこの曲に新たな息吹を与えている。バンドの実績と経験に裏打ちされた底力を見せつけてくれており実にタフで粋な演奏である。
ロッコ : 本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。
またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ他)絵画に興味ある方はご覧ください。