THE STREET SLIDERS/NASTY CHILDREN(ザ・ストリート・スライダース/ナスティ・チルドレン) Vinyl Diary
『NASTY CHILDREN』『NASTY CHILDREN』は、日本のロックバンド THE STREET SLIDERS 8作目のスタジオ・アルバムで1990年12月にリリースされた。 2023年デビュー40周年に初アナログ化された。
THE STREET SLIDERS
村越(HARRY)弘明(ボーカル・ギター)、土屋(蘭丸)公平(ギター・ボーカル)、市川(JAMES)洋二(ベース・ボーカル)、鈴木(ZUZU)将雄 (ドラムス)
1980年結成。
1983年にEPIC・ソニーからレコード・デビュー。
1983年3月 SLIDER JOINT
1983年12月 がんじがらめ
1984年11月 JAG OUT
1985年7月 夢遊病
1986年11月 天使たち
1987年10月 BAD INFLUENCE
1989年1月 SCREW DRIVER
1990年12月 NASTY CHILDREN
1995年4月 WRECKAGE
1996年11月 NO BIG DEAL
(ライブ、ベスト盤は割愛)
2000年に解散。
スライダーズデビュー40周年:2023年1月23日、豪華トリビュート盤とオリジナル音源の2枚組発売の告知。
The Street Sliders Hello!!(日本武道館公演):2023年5月3日に東京の日本武道館で「The Street Sliders Hello!!」ライブが行われ、解散後22年と半年振りにメンバー4人がステージに再集結。バックステージ開放席、立ち見席も含めた約1万4千人分のチケットは全て完売した。終演後、秋に全国ツアー『ROCK’N ROLL』を行うと発表。WOWOWより日本武道館からライブの独占生中継及びストリーミング配信も行われた。
『NASTY CHILDREN』
SIDE A 1,COME OUT ON THE RUN 2,CANCEL 、3,T’S ALRIGHT BABY、4,FRIENDS、5,LOVE YOU DARLIN’
SIDE B 1,THE LONGEST NIGHT 、2,ROCKN’ROLL SISTER 、3,安物ワイン 、4,PANORAMA 、5,DON’T WAIT TOO LONG
2023年、日本の音楽界で嬉しかった最大のトピックはなんといってもザ・ストリート・スライダースのデビュー40周年を祝うライブが開催されたことであろう。解散してから22年後である。加えて最後期の3作品がアナログ盤として初リリースされた。今回紹介する『NASTY CHILDREN』はその中の1枚である。スライダースのスタジオ・アルバムのジャケットはいつもメンバーの写真で構成されているが、唯一顔写真の入っていないジャケットである。アルバムの全体的な印象はアップ・テンポな曲よりもミディアム〜スローに比重が置かれ、質感やグルーブをより重視した作品になっている。目新しさは少ないが、これまでのスライダースを更に堅実に昇華させた、といえるだろうか。もはや、職人の域に達している4人である。
SIDE A
COME OUT ON THE RUN
アルバム・トップを飾る軽快なロックンロール。肩の力の抜けたこなれた職人的な安定した演奏。4人がそれぞれの職責を十二分に果たしている。歌詞では“ライブ“でも“ショー“でもなく“ギグ“というワードをチョイスしたハリーに、初心に帰ったかのような意気込みを感じるのは僕だけだろうか。
CANCEL
ややテンポを落としたミディアム・チューン。Aメロはいつものスライダースらしい流れだが、Bメロはあまりメロディのない単調でシンプルなフレーズだ。こうしたアプローチはスライダースとしてはかなり珍しいと思うし、新しいと思う。グルーブを優先する結果こうなったのか、意図せずこうしたのかは分からないが、なかなかなチャレンジだし斬新だと思う。ズズのカウベルがいい感じである。
IT’S ALRIGHT BABY
緊張感漂うジェームスのベース、正確で重いズズのドラム、ハリーと蘭丸の絶妙に絡み合うツイン・ギターとヴォーカル、洗練された超重量級のキラー・チューンである。雰囲気のあるブリッジ(テープ逆回転が使用してある)弾けるようなサビのメロディ、蘭丸のウネるギター・ソロ、シンプルだけど深みのあるリリック、後半に入るヴァイオリンも実に効果的。ロック・バンドがクリエイトするダンス・ミュージックがここまでカッコ良くなるという、見本のようなトラックである。ここにスライダース・ファンクの究極の形を見る。個人的に本アルバムのベスト・トラック。
FRIENDS
ハリーの詩人としての魅力に溢れるミディアム・スローの1曲。ここでの4人の演奏はかなり削ぎ落として、敢えて余白を作っているようにみえ、ハリーの歌声に寄り添うようだ。全編に控えめに配されたキーボードも曲に厚みを加えている。離れていった友人のことを歌っているのだろうか。「ここがおまえと出会った場所さ」の一文に胸が締め付けられる。
LOVE YOU DARLIN’
スライダースのもう一つの代名詞でもあるレゲエのラブ・ソングである。これまでの彼らのレゲエと比べて特に真新しさは見当たらないが、やはりこなれた達者な演奏で、このリズム・アプローチが完全に血肉化していて、まさに職人である。ここでも控えめながら効果的にキーボードが配されていて雰囲気を盛り上げている。
SIDE B
THE LONGEST NIGHT
B面トップはアッパーなロックンロール。この曲もかなり計算されたアンサンブルといった風で、音に隙間を残しながら、尚且つ過不足無しといった印象を受ける快作である。軽快な曲調ではあるが、歌詞はなかなか意味深なものがあり「くたばっちゃいないさ 夜の底で くすぶったままの長い長い夜」といったあたり、当時のハリーの心境が吐露されているのだろうか。とはいえ「ラクにやろうぜ〜」というラストのバースに光が差し込んでいるように見える。
ROCKN’ROLL SISTER
蘭丸がリード・ヴォーカルを取るシンプルなドライブ感のあるロッキン・チューン。ギンギンのイントロのギターが抜群にカッコいい。蘭丸の声には深めにリバーブがかけてあり、サイケデリックな雰囲気。バッキングにアコースティック・ギターも使われていて、そのサイケな雰囲気を盛り立てている。歌心溢れるギター・ソロはハリーか。
安物ワイン
ミディアム、横ノリの、これもスライダースらしいストレートなロック。ルーズさは鳴りを顰め、4人の演奏といい、コーラス・ワークといいキャッチーなサビといい、実に端正で丁寧なアンサンブル、加えてグルービー。2人のギターの鳴りが非常に良く聴こえ、ギター・ロック好きにはたまらないトラック。派手さはないが、飽きが来ない、何度でも繰り返し聴ける曲である。
PANORAMA
ザラついたハリーの声が切ない、心に沁みる、穏やかなメロディのバラード。心情吐露するハリーの歌詞が刺さる。ハリーと蘭丸の、キラキラしたギターの絡みも美しい。ここではアコースティック・ギターとホーンも導入されている。この曲はTVに出演した際にプレイしていたと記憶している。ロックンロールを選ばず、これをチョイスしたあたり、かなり自信があったのだろう。他の追随を許さない堅実な演奏だし、この頃スライダースは向かうところ敵無しだったように思う。
DON’T WAIT TOO LONG
クロージング・ナンバーはギター・バンドらしいミディアムのR&B。鉄壁のリズム・セクション、煌びやかな2本のギター、息の合ったコーラス・ワーク、まさに模範の演奏である。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ他)絵画に興味ある方はご覧ください。