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PAT MARTINO/EL HOMBRE(パット・マルティーノ/エル・オンブレ) Vinyl Diary

『EL HOMBRE』El Hombre』は1967年にプレステッジからリリースされた当時弱冠22歳のジャズ・ギタリスト、パット・マルティーノのデビュー・アルバムである。

パット・マルティーノPat Martino):1944年、アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。父の影響で音楽に興味を持ち、12歳でギターを始め、15歳からプロとして活動を始めた。1967年プレステッジから『エル・オンブレ』El Hombre でデビュー。その後も数枚のアルバムをリリースする。1976年に脳動脈瘤で倒れ、1980年に手術を受けた結果成功するも、過去の記憶をすべて失うというアクシデントに見舞われる。リハビリにより回復し、1987年にレコーディングされたアルバム『バック・イン・ニューヨークライブ・アット・ファット・チューズデイズ』(The Return)で音楽活動を再開。以後精力的にレコーディング、ライブを継続する。マシンガンと呼ばれる超絶技巧のテクニックや、ジャズの即興理論「マイナー・コンバージョン」を定式化したことでも知られる。2018年、慢性呼吸器疾患のため、演奏活動停止。2021年、1121日に逝去。享年77歳。

EL HOMBRE

Personnel

Guitar – Pat Martino、Organ – Trudy Pitts、Drums – Mitch Fine、Bongos – Vance Anderson、Congas – Abdu Johnson

Producer – Cal Lampley

Recorded By – Rudy Van Gelder

Track list

A1.Waltz For Geri、2. Once I Loved、3.El Hombre、4.Cisco

B1.One For Rose 、2.A Blues For Mickey-O  、3.Just Friends

オルガン・ジャズ・アルバムの中でも屈指の名作である。本作はオルガン・トリオ(オルガン+ギター+ドラムス)を軸に、曲によってボンゴとコンガのパーカッション、フルートが参加する形で演奏されている。

マルティーノのギターが素晴らしいことは言わずもがな、トゥルーディー・ピッツのオルガンも大変素晴らしい。

女性オルガン奏者のトゥルーディー・ピッツは1932810日ペンシルバニア州フィラデルフィア生まれ。マルティーノとは同郷で一回り歳上である。1967年デビュー・アルバム『Introducing the Fabulous Trudy Pitts』をリリース。このアルバムにマルティーノは参加しており、その流れで本アルバム製作の流れになったのではなかろうか。女性ジャズ・オルガニストとしてはシャーリー・スコットの次くらいに名前が出てくる人で、数枚のリーダー・アルバムを残している。(20101219日同地で死去)

パーカッションの参加が演奏の奥行きを更に深めている。(ケニー・バレルのアルバムもパーカッションが参加している作品が多い)楽曲のリズムを強化し、曲に新たなカラー、アクセントや、ラテンフレイバーを付加するのに貢献している。

また驚かされるのはB1.Once I Loved 、B3.Just Friendsの2曲以外は全てマルティーノのオリジナルであることである。プレイヤーとしてだけでなくソングライターとしても才能にあふれた人である。

Side A A1.”Waltz For Geri”は、のっけからのワルツ。テーマメロディからソロまで全てマルティーノが引き通し、オープニングから流麗なテクニックを見せつけている。ハーフ・チョーキング、ダブル・ストップなどでブルージーさを醸している。A2”Once I Loved”は、アントニオ・カルロス・ジョビン作のボサノヴァ。テーマは全てオクターブ奏法、ソロは最初シングル・トーンから入り途中から怒涛のオクターブ奏法、ウェス・モンゴメリの影響か。ラテン風味を醸し出すパーカッションも実に良く効いている。A3. ”El Hombre”6/8拍子のタイトル・ナンバー。テーマをフルートのとユニゾンで弾いている。ここで初めてギター以外のソロでダニー・ターナーのフルートが入る(ここまではソロは全てマルティーノのみが弾ききっており、オルガンもソロがない) A4.”Cisco”は軽やかでグルービーな16ビート。テーマではフルートと息のあったハーモニーを聴かせる。ここではマルティーノのファンキーなギターが存分に楽しめる。

Side BB1.”One For Rose”はアップテンポのチューン。テーマはギターとフルートのユニゾン。軽快なフルートのソロに続きマルティーノのギター。汲めども尽きぬ泉のように次から次へマルティーノのリックが繰り出される。ソリストを支えるトゥルーディー・ピッツのバッキングのオルガンもキレッキレでシャープ、カッコいい。 B2.”Blues For Mickey-O”は、グルービーなミディアム・テンポのジャズ・ブルース。同じフレーズを繰り返すグラント・グリーンのようなフレーズに続き、ウェスばりのオクターブ奏法を披露。ここで初めてオルガン・ソロ。トゥルーディー・ピッツのブルージーでノリノリの熱いプレーが聴ける。ピッツはこの曲と次の ”Just Friends”でしかソロを取ってないのが残念。B3. ”Just Friends”はよく知られたスタンダード。マルティーノの明るいトーンの軽やかなリックが素晴らしく続くトゥルーディー・ピッツのソロも申し分ない。オルガンソロのバッキングをするマルティーノのギターがこれまたグルービーで胸が熱くなる。

ロックが好きで、これからジャズも聴き始めたいという方に、是非聴いてもらいたいアルバムである。

ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。  またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。

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