THE CRAMPS / GRAVEST HITS (クランプス / グラヴェスト・ヒッツ)　 VINYL DIARY

『GRAVEST HITS』

『GRAVEST HITS』は、Cramps による初の 12 インチ EP

~ABOUT THE CRAMPS~

ザ・クランプスは、シンガーのラックス・インテリアとギタリストのポイズン・アイビーの夫婦を中心に1976年に結成され、2009年まで活動した、激しいライブ・アクトでカルト的な人気を誇ったアメリカのバンドである。

その特異な音、ヴィジュアル・イメージからガレージ、サイコビリーといった枠組みで語られる。2人以外のメンバーはアルバムごとに流動的。結成してしばらくはヴォーカル+ツイン・ギター+ドラムスという編成でプレーしていた。(後にヴォーカル+ギター+ベース+ドラムスの編成)

パンクロックの要素とロカビリーを融合させた、サイコビリーとカテゴライズされることについて。ポイズン・アイビーは、自らサイコビリー・バンドだと名乗ったことはなく、初期のチラシでは「ロカビリー ブードゥー」という用語を使用していたという。また過去に「ブルースとR&Bからの影響が大きく、ロカビリーもブルースにルーツがあるため、我々は自分たちをブルース・バンドだとも考えている」と発言しているのも大変興味深い。

その他、B級映画、ホラー・ムービー、初期のロカビリー、リンク・レイやヘイゼル・アドキンスのようなＲ＆Ｂや Ｒ＆Ｒ、ベンチャーズやディック・デイルなどのサーフ・ミュージック、ザ・トラッシュメン、ザ・ソニックスのような1960年代のガレージ・ロック・アーティストに多大な影響を受けていた。またラモーンズやスクリーミン・J・ホーキンスからの影響も公言していたようである。

NYパンクを代表するミュージシャン、テレヴィジョンやミンク・デヴィル、ジョニー・サンダースと同様にクランプスも本国アメリカよりもヨーロッパで絶大な人気を誇った。例えば、1984年のヨーロッパ・ツアーでは、ハマースミス・パレでの4夜が完売。翌1985年、同じくロンドンのハマースミスで6晩、オデオンで3夜の他、イギリス全土でソールドアウトの会場が続出した。

『GRAVEST HITS』

Track List

1, Human Fly、2, The Way I Walk、3, Domino、4, Surfin’ Bird、5, Lonesome Town

Cramps : Lux Interior – vocals、Poison Ivy Rorschach – guitar、Bryan Gregory – guitar、Nick Knox – drums

Gravest Hitsはクランプス初の12インチEPで1979年にリリースされた。(僕の手元にあるのは2ndアルバム『Psychedelic Jungle』との2 in 1 CD)  1977年にレコーディングされた2枚のシングル、1枚はHuman Fly／B面Domino。もう１枚はSurfin’ Bird／B面The Way I Walk  、の4曲にさらに1曲Lonesome Townを加えた計5曲が収録されている。トラックは全てメンフィスでの録音、アレックス・チルトンのプロデュース。

ラックス・インテリアとポイズン・アイビーの出会いはヒッチハイクがきっかけだった。ポイズン・アイビーがヒッチハイクをしていたところ、ラックス・インテリアが通りかかり、ピックアップ。B級ガレージ、MC5、アリス・クーパーなど、お互いの趣味が合うことを知り意気投合。その後、バンドを結成し、果ては結婚するまでに至った。ヒッチハイクで出会ったというのが、いかにもアメリカ的でロマンティック。本作には、そんな2人のルーツを辿れるロックンロールが収められている。5曲と曲数は少ないが、かなり濃密な内容である。

1. Human Fly

ラックス・インテリアとポイズン・アイビーの共作、シンプルな3コード、ロカビリーとブルースの折衷といった感じのミディアム・テンポのナンバー。トレモロとリバーブを効かせて単音でフレーズを弾くポイズン・アイビーと、歪んだロングトーンの音を敷き詰めたようなブライアン・グレゴリーが実に対照的なツイン・ギターが堪能できる。

2. The Way I Walk

オリジナルはジャック・スコットの躍動的なヴォーカルとドゥー・ワップ調のコーラスが魅力的なアコースティック・タッチのロカビリー。クランプスはテンポを落とし重くダークにラウドにプレーしている。デフォルメされたラックス・インテリアの歌い方はこの時点で既に完成しているし、奥行きのある乾いたポイズン・アイビーのギターの音が得も言われぬカッコ良さ。余談だが、この曲はロバート・ゴードンもライブで取り上げていた。

3. Domino

オリジナルはロイ・オービソン。リズミカルで軽妙洒脱な原曲に対し、クランプスはここでも重くハードにどっしりとした演奏を聴かせてくれており、同一曲とは思えないほどの快演である。この曲でもポイズン・アイビーのギターの音が非常に良く、相当な拘りを持って音作りをしていることが窺える。異様なストイックさのニック・ノックスのドラムがヴォーカルとギターを実にうまく引き立てている。

4. Surfin’ Bird

オリジナルはトラッシュメン。比較的原曲よりの演奏で、元々の破茶滅茶な雰囲気をクランプスは見事に踏襲している。後半の激しく逸脱していく様は正にカオスで、これぞクランプス！といった雰囲気。

5. Lonesome Town

オリジナルはリッキー・ネルソン。柔らかい歌唱、カントリー・タッチのフォーキーなギターの弾き語りの原曲を、クランプスはギターによるコードのバッキングに加えて装飾的なスライド・ギターとシンプルこの上ないバス・ドラムを入れて仕上げている。原曲の持つセンチメンタルな感触を踏まえつつ、クランプスらしいバンド・サウンドに落とし込んでいる。