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MORPHINE / THE NIGHT(モーフィン/ザ・ナイト) Vinyl Diary

『THE NIGHT

『ザ・ナイト』はモーフィンの5thアルバム。フロント・マン、マーク・サンドマンの死により、ラスト・スタジオ・アルバムとなった。

モーフィンMorphine)はニュー・イングランドで結成されたアメリカのロック・バンド。メンバーはマーク・サンドマンヴォーカル、二弦スライド・ベース(1989–1999)、デイナ・コーリー – バリトン、テナー・サックス(1989–1999)。ドラムは時期によって異なりジェローム・デュプリー (1989–1991, 1991–1993, 1998–1999)、ビル・コンウェイ (1991, 1993–1999)の2人がつとめた。酔っ払ったミュージシャンがビール瓶をスライドバー代わりにしてベースを弾いていたのを見て、自身もトライ。最初は1弦のみでプレイしていたがハーモニーを出せるように2弦に改良。ピックアップはプレシジョンをリヤとフロントにマウントした、こうしてマーク・サンドマンは自分のスタイルを確立した。

ヒストリー1989年元Treat Her Rightのマーク・サンドマン(ボーカル、スライドベース)と、ボストンのローカル・バンドで活動していたデイナ・コーリー(サックス)、ジェローム・デュプリー(ドラム)によって結成される。結成当初、サンドマンは弦を1本のみ張ったベースをスライド・バーを用いて演奏していたが、後に弦をもう1本追加して独特の2弦スライドベースを編み出した。サンドマンのベースに、コーリーのバリトン・サックス、そしてドラムから構成される変則トリオは低音を主軸としたジャズ、ブルース寄りの独特のロックを展開。その音楽は“Low Rock”と形容された。

19921stアルバム『Good』を地元のインディーレーベルから発表。19932ndアルバム『Cure For Pain』カレッジラジオを中心に評判を呼んだ。リリース後はアメリカ、ヨーロッパ、日本をツアーして周る。19953rdアルバム「Yes』、19974thアルバム『Like Swimming 』と続けてアルバムを発表。しかし、199973日、イタリア・パレストリーナでのライヴ中にマーク・サンドマンが心臓発作で倒れ、客死。突然の悲劇でフロントマンを失ったバンドはすぐに解散を発表した。

2000年には遺作となる5thアルバム『The Night』がリリースされ、残されたメンバー二人は“Orchestra Morphine”という9人編成のバンドを率いてアメリカ東海岸でトリビュート・コンサートを行った。また、2011年にはマーク・サンドマンの生涯を描いたドキュメンタリー映画『Cure for PainThe Mark Sandman Story』が公開された。スタジオ・アルバム以外にもライブ・アルバム、2000 「Bootleg Detroit』を、コンピレーション・アルバム、1997 『B-Sides and Otherwise』、2003 『The Best of Morphine: 1992-1995』、2004 『Sandbox: The Mark Sandman Box Set』、2009 『At Your Service』の4枚をリリースしている。

『THE NIGHT

TRACK LIST

1.” The Night” 、2.” So Many Ways” 、3.” Souvenir” 、4.” Top Floor, Bottom Buzzer” 、5.” Like a Mirror” 、6.” A Good Woman Is Hard to Find” 、7.” Rope on Fire” 、8.” I’m Yours, You’re Mine” 、9.” The Way We Met” 、10.” Slow Numbers” 、11.” Take Me with You”

レコーディングはマサチューセッツ州ケンブリッジにあるヴォーカリスト+ベーシストのマーク・サンドマンのホームスタジオで2年がかりでレコーディングされ、99年春にはレコーディングを全て完了していた。

同年の夏、バンドは2週間のヨーロッパ・ツアーに出て、その2日目のことである。ローマ近郊パレストリーナという町のサマー・フェス、深夜のステージに出演中、オープニングから2曲目でサンドマンは倒れ、病院に運ばれる救急車の中で心臓発作のため息を引き取った。享年46歳。残された音源のミキシング作業はサックスのデイナ・コリーとドラムスのビリー・コンウェイの手で進められ、そして完成したのが本作である。USビルボード137位を記録した。

 

1.” The Night” は、正にタイトル通りのジャジーな雰囲気を漂わせている。余白のある曲のイメージを更に広げるようなピアノやチェロが装飾的に入っているが、それがオーソドックスなモーフィン・サウンドを一層強調しているようだ。なお、本作ではビリー・コンウェイに加えて、初期のドラマー、ジェローム・デュプリーも殆どの曲で参加しており、一聴しただけでは分かりにくいが、ツイン・ドラムというフォーマットを取っているのかもしれない。ピアノはサンドマン自身か。

2.” So Many Ways”

歪んだギター(?)がバッキングに採用された、モーフィンとしては珍しいトラック。いい感じで入るオルガンはサンドマンだろうか。女性コーラスとサンドマンのヴォーカルがファンキーでエロチック。

3.” Souvenir”

ダークなスロー・ナンバーで、この曲も非常にムーディーな曲。サックスはオーバー・ダブしている箇所があるが、全体的にはかなりミニマムに、極限まで音を削ぎ落とした感じでムーディーではあるが、ある種の緊張感も持った、モーフィンらしい曲。

4.” Top Floor, Bottom Buzzer”

イーブンな8ビート、ダブル・トラックのサンドマンの抑えたトーンのヴォーカルと、女性コーラスの絡みが渋過ぎる。控えめだけど良い味のオルガンはジョン・メデスキ。彼は  8.” I’m Yours, You’re Mine”  でも、その腕前を披露している。

5.” Like a Mirror”

イントロのコケティッシュな声の持ち主はマーガレット・ギャレットという女性のようだ。歌というより呟きに近いサンドマンのヴォーカル。ドラムを含めたパーカッションもエキゾチックで、ソングライター、マーク・サンドマンの引き出しの広さに驚く。

6.” A Good Woman Is Hard to Find” – 4:14

ベース・ラインが印象的で音作りとしてはハードでダンサブルな1曲。この曲でのサンドマンのヴォーカルはとにかくセクシーだ。そして、この曲でもエレキ・ギターが使用されているようだ。

7.” Rope on Fire”

中東を感じさせるアラビアンな1曲。サンドマンのアコースティック・ギターとマイク・リバードのダブル・ベースが密室的な雰囲気で、これまでのモーフィンでは聴けなかったサウンドである。新境地ではないだろうか。本作に於けるこの曲の貢献度は大だと思う。

8.” I’m Yours, You’re Mine”

饒舌なダナ・コリーのサックスが曲を引っ張る。ちょっと捉えどころのないナンバーなのだが、スペーシーな効果音が入っており、これまでのモーフィンでは、あまり聴いたことがないと思う。

9.” The Way We Met”

アルバム中、1番アップ・テンポの曲だが激しさがなく、終始、グッと抑えたトーンで曲が進んでいくのだが、それがまたなんとも言えないカッコよさがある。ヴォーカルの声の処理の仕方も実験的。

10.” Slow Numbers”

久々にベースとサックスがユニゾンのリフで出来ている曲。この揺らぎの気持ち良い曲にはメンバー以外の楽器が入っていないようで、モーフィンの原型そのものといえる。

11.” Take Me with You”

哀しげなメロディーが印象的なナンバー。抑揚の効いたダナ・コリーのサックスとヴィオラ、チェロの弦楽器の絡みがこの上なく美しい。

12.” Come In Houston “

日本盤のみのボーナス・トラック。打ち込みっぽいドラム、ワン・コードのリフを延々繰り返すチープなベース音、いくつか重ねてあるトロンボーンはサンドマンが吹いている。かなり音を加工してあル上に、効果音も重ねて、遊び心満載のコミカルなインスト・ナンバーに仕上がっている。

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ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。  またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。

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