G・LOVE & SPECIAL SAUCE(G・ラヴ&スペシャル・ソース) Vinyl Diary

『G. LOVE & SPECIAL SAUCE』G・ラヴ&スペシャル・ソースフィラデルフィア発のトリオ・バンド。本作は1994年にOkeh(オーケー・レコード)からリリースされた。
G. LOVE & SPECIAL SAUCE (G・ラヴ&スペシャル・ソース)のデビュー・アルバム。 G・ラヴ&スペシャル・ソースは、G・ラヴ — ボーカル、ギター、ハーモニ、ジミー・プレスコット- ベース、ジェフリー・クレメンズ – ドラムス、の3人によるフィラデルフィア発のトリオ・バンド。本作は1994年にOkeh(オーケー・レコード)からリリースされた。この時、リードヴォーカル+ギターのGラブは若干21歳!である。
このオーケー・レコードは1918年に設立されて以降、ルイ・アームストロングやロニー・ジョンソンなど、ブルースやジャズのレコードを世に送り出していた老舗レーベルである。40〜50年代は隆盛をきわめたものの、経営が傾き69年には閉鎖されたが、90年代に入りエピック・レコードの援助により復活。そしてリリースされたのが、このアルバムである。
ジェフリーが叩く心地良い16ビートのダンス・ミュージック。ドラムだけだと、フロアで流れていそうなヒップポップ〜ラップ系の音楽のようだ。しかし、ここにオーガニックなサウンドのジミーのウッド・ベースが加わる。ガレージっぽい図太いベースだが、流れるようなフレーズが実に心地良い。ドラムとベースが一体となって作り出されるこの独特のグループは、ちょっと他では味わえない。その上、どのような方法でレコーディングがされたのかは分からないが、とにかく音が良い。まるでレコーディング・スタジオで聴いているかのようだ。
そして、そこにひとクセもふたクセもあるGラブのギターとヴォーカルが重なる。この歌い方はなんだろうか。つんのめったり、食い気味になったり、調子っぱずれになったり。それでいて澱みなく流れてくるワードが自然な形でリズムに収まっている。ハーモニカもギターも、洗練とは程遠いのだが、説得力のある音である。これは、かなりブルースに精通していないと出せないと分かる音である。
このアルバム、殆どの曲(8〜9割)が16ビートというのも面白い。ただ、同じファンクでも、アコースティックな音を主体とした曲もあれば、リフで攻めるナンバーもある。おそらく3人とも、この手のリズムに目がないということだと思うが、あの手この手で、各曲の表情を変える手腕は見事である。また、カウントを入れる声がたまに聴こえるのだが、おそらく一発録りであろう。そしてオーバー・ダビングも最小限に抑えてあるようで、各楽器の音の輪郭がよく分かる。
16ビートから外れた曲を挙げると、A3 “Garbage Man” 、B5 “Town To Town “ は、ヘビーなブルース、実に渋く、カッコいいの一言に尽きる。21歳とは到底思えない。A6 “Rhyme For The Summertime “ は16ビートとボサノヴァが混ざったようなドラムのアプローチが面白い。戦前のブルースのようなB4 “Shooting Hoops” のイントロも、いなたい感がなんとも言えず味わい深い。B4 “Some Peoples Like That” は、このアルバムで数少ない(イーブンなリズムの)8ビートで、やはりとても新鮮に聴こえる。そしてB6 “I Love You” 、Gラブによる弾き語りでエンディングとなる。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。
またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。