THE BLACK CROWES/ THE SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION(ブラック・クロウズ/サザン・ハーモニー) Vinyl Diary
『SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』『SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』は1992年にリリースされたTHE BLACK CROWESの2ndアルバム、全米1位を記録した大ヒットアルバムである。
Discography
1992年 「The Southern Harmony And Musical Companion』
1994年 『Amorica』
1996年『Three Snakes & One Charm』
1999年『By Your Side』
2000年『Greatest Hits 1990-1999: Tribute Work in Progress』ベスト盤
2001年『Lions』
2008年『Warpaint』
2009年『Before the Frost…』
2009年「Until The Freeze』
2010年『Croweology』
2022年『1972 (EP)』
『SOUTHERN HARMONY AND MUSICAL COMPANION』
Track List
- A1. Sting Me、2.Remedy、3. Thorn in My Pride、4. Bad Luck Blue Eyes Goodbye、5. Sometimes Salvation
B1. Hotel Illness、2. Black Moon Creeping、3. No Speak No Slave、4. My Morning Song、5. Time Will Tell
Personnel
The Black Crowes : Chris Robinson – vocals, percussion, blues harp, guitar、Rich Robinson – guitar、Marc Ford – guitar、Johnny Colt – bass guitar、Steve Gorman – drums、Eddie Harsch – keyboards
Additional musicians : Chris Trujillo – congas、Barbara Mitchell and Taj Harmon (now Taj Artis) – choir
デビュー・アルバム『Shake Your Money Maker』から2年、満を持してリリースされたのが本作である。
土色のジャケット、5人の背後には南部のどこかだろうか、荒廃した街の一部が写しとられている。
フレアのパンツとブーツといういでたち、ばっちりメイクをきめたヴォーカルのクリス・ロビンソンはフラワー・ムーブメントの女性のような格好、一方でドラムのスティーブ・ゴーマンは前作と打って変わって髪をベリー・ショートにカットしてスタイリッシュになっている。
ジャケット向かって右から2人目はギタリスト、マーク・フォード。ジャケット裏の右から2人目はエディー・ハーシュ。2ndアルバムには、この2人が新メンバーとして参加している。2人とも髪が長く、まるで昔からのメンバーのように馴染んで見える。
このアルバムを聴くと、前作がややポップな印象に思えるほどに、ハードでディープなブルース・ロックを展開している。マーク・フォードの加入は大正解で、彼のプログレッシブというのか、スケール・ライクなヘビーなギターは、バンドにとてもマッチしているように思う。
またエディー・ハーシュというパーマネントなキーボーディストが入ったことで、より親密で安定した、強靭なアンサンブルを作り出すことに成功しているように思う。
リズム、コードワーク、曲の展開、アンサンブル、テクニック、表現力、ワイルドネス、全てにおいて前作を大幅に上回る会心の出来といえる。
特に楽曲の構成において。ブルースに根差したグループは通常どうしても3コードの、ある意味単調な楽曲に終始することが多いが、本作でのブラック・クロウズは楽曲が非常に多彩で、コード・チェンジも一筋縄でいかない展開の曲が多い。故に繰り返し聴いてもその都度発見があったりするわけで、そういった部分がこのアルバムを重厚なモノにしていると思う。
センスが問われるカバー曲は、前作ではソウル・シンガー、オーティス・レディングの“Hard To Hundle”を取り上げていたが、本作ではアルバム・ラストでレゲエの大御所ボブ・マーリィーの“Time Will Tell”にトライして守備範囲の広さを見せつける。
今作もリフ職人リッチ・ロビンソンのギターが全編に冴え渡っている。また時に憑かれたような表情をみせるクリス・ロビンソンの前作以上に圧倒的なヴォーカリストとしての表現力も見逃せない。
僕はこの作品をずっとアナログ盤が欲しいと思いながらCDで持ってて、やっと最近LPが購入出来た。いつ頃の発売のモノから分からないのだけど、180gの重量盤で2枚組。2枚組ってジャケットに収める時、スリーブがシワになったり破れたりしやすいから1枚モノで充分なのだけど。まぁいい、やっと手に入ったから嬉しい、ほんと。
<SideA>1. Sting Me
裏拍か表か分からなくなる複雑なリズム・アプローチ、轟音のギター・リフで幕を開ける豪快な1曲。前作の比較的落ち着いたオープニング・ナンバーみたいのを予想していると、これが大きく異なり初っ端から爆音ロックンロールだ。シンコペートするバッキング・ギター、クリス・ロビンソンのヴォーカルものっけから全快である。
2.Remedy
間髪入れずに始まるミッド・テンポのナンバー。ツイン・ギターから繰り出される圧が凄まじい。女性コーラスとクリス・ロビンソンのヴォーカルの掛け合いも聴きもの。エディ・ハーシュはフェンダー・ローズだろうか、ギター・ソロ後の滋味深いプレーが実に良い。このオープニングの2曲だけで完全にもっていかれる。
3. Thorn in My Pride
ここから2曲続けて南部の風漂うアーシーなスロー・チューン。アコースティック・ギターにオルガン、パーカッションも加わり非常にその音空間に広がり、奥行きを感じる1曲。後半には女性コーラスが入りゴスペルぽく熱い分厚いサウンドになる。
4. Bad Luck Blue Eyes Goodbye
実に枯れた味わいのブルージーなスロー・ナンバー。切々と歌うクリス、豊かなフレージングの泣きのギターで応えるフォード、グッとタメの利いたリズム隊。じっくりと耳を傾けたいナンバーだ。ハーシュのフェンダー・ローズも小技が効いている。ラストに向かう大きなゆったりとしたノリのギターとクリスのエモーショナルな歌唱が光る。
5. Sometimes Salvation
印象的なリフ、明らかにブルースがバック・ボーンにあるが、それだけでは語りきれない非常にオリジナリティの高い、ブラック・クロウズならではの楽曲。マーク・フォードのウーマン・トーンを駆使したギター・ソロ、クリス・ロビンソンの喉が割れ切った渾身の歌唱に思わずこちらも力が入ってしまう。
<SideB>1. Hotel Illness
1stアルバムの延長線上のゴキゲンな爽やかさ(?)すら感じるサザン・テイストのミディアム・ロッキン・チューン。ここではクリス・ロビンソンのハープ、ヴォーカルの合間を縫うように弾かれるドブロの泥臭い音が聴ける。ギター・ソロはリッチでエンディングのギターはマーク・フォードか。
2. Black Moon Creeping
低音弦のヘビーなギター・リフ、ハープ、ワウ・ギターが絡み、ごった煮的な感じが実に魅力の、サイケデリックでダンサブルな、ヴードゥーぽい妖しさも持つファンク・チューン。サビ部分のメンバーが一体となった圧倒的な演奏が筆舌に尽くしがたい。
3. No Speak No Slave
ブルージーでヘビーな曲が続く。ツェッペリンあたりにも通じるヘビーなリフが印象的なナンバー。(そういえばブラック・クロウズはジミー・ペイジと共演してましたね)この曲はリフが肝で、とにかくグループと濃厚な音を楽しみたい。ツイン・ギターのハモり、ギター・ソロ、エンディングのワウもカッコいい。
4. My Morning Song
豪快なスライド・ギターが全面にフューチャーされたミッド・チューンのサザン・ロック。一旦カーム・ダウンする女性コーラスが印象的なファンタジックなブリッジが組み込まれており、それによって一層深みのある芳醇な1曲に仕上がっている。
5. Time Will Tell
アンニュイな雰囲気すら漂わせるこのレゲエ・ナンバーをブラック・クロウズは原曲のムードを損なわず、枯れたアコースティック・サウンドで、アーシーに仕上げている。ジョン・リー・フッカーのブギーをスローに演奏しているかのような不思議な妖しさも併せ持つ。ジャマイカではなく、やはりアメリカ深南部を想起させる奥深いクロージング・ナンバー。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ他)絵画に興味ある方はご覧ください。