THE KILLS/ASH & ICE(ザ・キルズ/アッシュ・アンド・アイス) Vinyl Diary
『ASH & ICE』
2016年、前作『BLOOD PRESSURES』から5年振りとなる新作リリース
The Kills (ザ・キルズ) は、ジェイミー・ヒンス(通称ホテル イギリス出身)とアリソン・モシャート(通称ヴィヴィ アメリカ出身)からなるデュオ/バンド。繊細なヴォーカルと攻撃的でローファイなギターが奏でるガレージ・ロック、パンク、ブルースをルーツとするサウンドでUKロックの隆盛を支え、絶大な支持を得る。
THE KILLS 2人の出会い:ディスカウントというバンドでイギリス公演中だったヴィヴィが泊まったホテル。そこにはたまたまホテルも滞在しており、彼の部屋から漏れ聴こえる音楽にヴィヴィが興味を持って近付いたことで、2人は運命的な出会いを果たす。意気投合した2人は、ヴィヴィがアメリカに帰国してからも大西洋をはさんでお互いの自作の音源のやり取りを続け、その後合流。2001年にデモテープ発表。
ディスコグラフィー
2002年、ドミノから『Black Rooster EP』でデビュー。
2003年3月、1stアルバム『Keep on your mean side』リリース。
2005年2月、2ndアルバム『No Wow』リリース。
2008年3月、3rdアルバム『Midnight Boon』リリース
2011年4月、4thアルバム『Blood Pressures』リリース
2016年6月、5thアルバム 『Ash & Ice』リリース。
2020年12月、 『Little Busters』(Bサイドとレア音源の全曲リマスター編集盤)リリース。
現在まで6枚のアルバムをリリースしている。
『ASH & ICE』
Track List
A-1Doing It To Death、A-2Heart Of A Dog、A-3 Hard Habit To Break
B-1 Bitter Fruit、B-2 Days Of Why And How、B-3 Let It Drop
C-1 Hum For Your Buzz、C-2 Siberian Nights、C-3 That Love、C-4 Impossible Tracks
D-1 Black Tar、D-2 Echo Home、D-3 Whirling Ey
ホワイト・ストライプス 、ストロークスらと共に、ロックンロール・リバイバルを牽引する男女デュオザ・キルズの5th『ASH & ICE』
ホテルの手の故障により完全復活に5年の歳月がかかってしまったということだが、待った甲斐のある作品に仕上がっている。これまでリリースしてきたアルバムは全て、ミシガンのスタジオにて作曲、レコーディングが行なわれていたというが、今回はLAに家を借り制作、NYの有名スタジオ“Electric Lady Studios”にてレコーディングが行われた模様。プロデュースにはホテルとジョン・オマホニー(ザ・クリブス、メトリック)、ミックスにはグラミー受賞プロデューサーのトム・エルムハーストとチャド・ブレイク(アークティック・モンキーズ、ブラック・キーズ)という顔ぶれ。
アッシュ&アイスはこれまでの彼らの作品より渋くクールだ。もちろん、熱い演奏なのだけれど、あくまでも冷静さを保ちながら熱くプレイしている、という印象を受けた。結果、これまでの“キッズのためのロック“が、“大人も踊れる(楽しめる)ロック“に深化した、という印象がある。
音に関しては、足し算よりも引き算を重視したような、かなり緻密なアレンジがなされているように感じる。具体的には、爆音系のギターが鳴りを潜め、その他のイクイップメンツが、より歌を引き立てるアレンジになっていると思う。また、ヴィヴィの歌唱力、表現力が増したことも記しておきたい。
Side Aこれまでの楽曲と比べてより一層のスケールの大きさ、懐の深さを感じさせるA-1「Doing It To Death」は随分聴かせるバンドになったなあという印象を受けるオープニング・ナンバー。 バッキングの後を極限まで削ぎ落とし、ヴィヴィのヴォーカルで聴かせるA-2Heart Of A Dog。 今まであまりなかった、ヴィヴィ自身のツイン・ハーモニーのヴォーカルによるA-3「Hard Habit To Break」はダンス・ミュージック好きにもウケそうな1曲。
Side Bギターのコード・ワークかオシャレな B-1 Bitter Fruit。B-2 Days Of Why And Howは、表現力を増したヴィヴィのヴォーカルが実に良い。 B-3 Let It Dropでは、これまであまり聴かれなかったリズム・トラックにトライしている。
Side Cホテルのシブいギター1本をバックにヴィヴィが切々と歌うバラードC-1「Hum For Your Buzz」。キルズ得意のダンス・ナンバーC-2「Siberian Nights」はビデオ・クリップもカッコいい。シンプルなピアノとほのかに聴こえるアコースティック・ギターの柔らかな調べのC-3「That Love」。 C-4 Impossible Tracks は、これぞキルズ!のローファイなガレージ・ロック。
Side DヴィヴィのボーカルがセクシーなD-1「Black Tar」、はホテルのギターの音がズ太くて格別に良い。 ただシンプルに弾き流しているだけのギターとかすかなリズムをバックにツイン・ヴォーカルで歌うD-2 Echo Home。反復するリズムとメロディで成った クロージング・ナンバー D-3 Whirling Ey 、は1コードでラストまで通すという大胆なトライ。
このアルバムから4年後の2020年12月にバンドはレア音源のリマスターアルバム『Little Busters』をリリースする。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。