THE DOORS/ABSOLUTELY LIVE(ドアーズ/アブソリュートリー・ライブ) Vinyl Diary
『ABSOLUTELY LIVE』1970年リリース、”セレブレーション・オブ・ザ・リザード”収録の貴重なライブ・アルバム
ドアーズは、バンドの持つイメージが特異だ。ジム・モリソンの書くリリック、スキャンダラスないくつかの事件。ヒッピー・ムーブメント、フランシス・フォード・コッポラとの繋がり(地獄の黙示録でTHE ENDが流れる)からのベトナム戦争想起などなど。ドアーズに関する記事を読むと、どっちかというと暗い方向に話が向かう傾向が強いと思う。
またバンドのフォーマット〜オルガン〜 (ベースも兼任)+ギター+ドラム〜についても変わった編成などと書かれている記事を見かける。多くの人にとっては変わったバンドなのかもしれない。
ドアーズは単純にカッコいいロック・バンドだ。暗いイメージが強いかもしれないが、明るくポップな曲、詩的で美しい名曲が沢山あり、シンプルに楽しめる。また上記した、バンドの編成についても、ジャズの世界では、、ジミー・スミスやBABY FACE WILLETTE(ベイビー・フェイス・ウィレット)らオルガン・ジャズ(・トリオ)の定番のフォーマットで、僕はオルガン・ジャズも好きだから、特別変わった編成だとの感覚も持たない。
さて、このアルバムは69〜70年にかけてのライブ音源から編集されていて、収録時間72分の2枚組、ジム・モリソン存命中(アルバム、モリソン・ホテルとLAウーマンの間、1970年7月)に発売された唯一のライブ盤である。初期の頃から比べると随分ブルース色が濃くなって骨太な印象を受ける作品だ。
『ABSOLUTELY LIVE』
Who Do You Love Medley: Alabama Song Backdoor Man Love Hides Five To One Build Me A Woman When The Music’s Over Close To You Universal Mind Break On Thru, #2 The Celebration Of The Lizard Soul Kitchen
Side A
A-1 House Announcer やや長めのアナウンスに続いて、ドアーズ登場、モリソンのMCがありオープニング・ナンバー A-2 Who Do You Love? はボ・ディドリーのカバー。いわゆるジャングル・ビート。クリーガーはスライド・ギターを弾いている。マンザレクのオルガンのベース音もズ太い良い音。モリソンのヴォーカルも結構ドスが効いた感じで凄みがある。次の曲からA面ラストまではミディアム〜スローのメドレー形式で進む。まず頭のA-3 Alabama Song は1st「ハートに火をつけて」に収録された曲。比較的忠実な演奏1コーラスを終えて A-4 Back Door Man に移る。これも1st「ハートに火をつけて」に収録。これはチェスの屋台骨を支えたブルース・マン(ベーシスト)ウィリー・ディクソンのカバー。重いリズムが響く。流麗なクリーガーのギター・ソロが終わると次の A-5 Love Hides に入る。1コードのブルース・ナンバーで1コーラス終えるとすぐにA-6 Five to One に繋がる。これは3rdアルバム「太陽を待ちながら」に収録された曲。Back Door Man 以降は完全にブルース・バンドと化していて、重ためのリズムが実にしっくりとバンドに合っている。
Side B
B-1 Build Me a Woman は3コードのシンプルなブルース。B-2 When the Music’s Overは2ndアルバム「まぼろしの世界」に収録。この時代ならではの、16分を超える演奏はかなりの熱量。途中原曲にはないアレンジで静かに演奏が進む箇所があり、モリソンのアドリブなのか、ポエトリーのような場面がある。
Side C
イントロ、観客とのコール&レスポンスを楽しんだ後、C-1 Close to You、これはウィリー・ディクソンのカバーで、典型的なシャッフルのプルース・ナンバー。ここではレイ・マンザレクのコーラスが入り、これがかなり良い感じで、モリソンも楽しんで歌っているように聴こえる。こういうのを聴くと、ピーター・バラカン氏がドアーズはブルース・バンドだ、と言ってたのが分かる。 C-2 Universal Mindはマイナー調のバラードから転調して間奏がワルツ形式になるオシャレで美しい曲。エキゾチックなギターも印象に残る。C-3 Break On Through は1stアルバムからのナンバー。官能的なビートで始まる名曲。イントロでエネルギッシュになり過ぎたのか、曲自体は原曲よりややおとなしい感じ、だがグルービーでバンドが一体となっているのは伝わる。
D-1 Celebration Of The Lizard は本作の目玉、公式アルバム初収録。センテンスごとの区切りはあり、組曲といった体の曲で若干芝居っぽい雰囲気もある。エキセントリックな打楽器をバックにしたポエトリーから始まり、その後、装飾的にギター、鍵盤が続き、しばらくしてから少しずつバンドの演奏という形になる。実験的で曲の全体像が若干掴みにくい。その後、The Hill Dwellers という1コードのジャムっぽい感じの曲に続き Not to Touch the Earth (3rdアルバム収録)のテンションの高い演奏が入りエンディングのポエトリーに向かう。 一旦ハケた後、熱狂的なアンコールにモリソンは上機嫌で応えて クロージング・ナンバー D-2 Soul Kitchenをプレーする。この曲は1st「ハートに火をつけて」に収録。この曲も長尺で、ここでも一部、ジャム・バンドのような雰囲気を楽しめる。観客の熱い歓声を受けながら4人はステージを降りていく。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。