T・REX/DANDY IN THE UNDERWORLD(T・レックス/地下世界のダンディ) Vinyl Diary
『DANDY IN THE UNDERWORLD』
マーク・ボラン(本名:マーク・フェルド)は1947年9月30日に英イースト・ロンドン生まれ。
1965年11月にマーク・ボーランド名義でソロ・デビュー。マーク・ボラン名義でセカンド・サード・シングルをリリースするが不発に終わる。ジョンズ・チルドレンにギタリストとして加入するも、3か月で脱退。その後アコースティック・デュオ「ティラノザウルス・レックス」を結成。何枚かの秀作を発表し、評論家筋をはじめ音楽的にも評価を高めた。路線を変更(アコースティックなものからややエレクトリック寄りのものとなっていく)し、1970年に「T・レックス」に改名してからヒット曲を連発。70年代にグラムロックムーブメントの第一人者として活動する。1977年9月16日、交通事故により他界。享年29歳。
T・レックスアルバムディスコグラフィー
1970 『T.Rex』( T・レックス)
1971年『Electric Warrior』 (電気の武者)
1972年『Bolan Boogie』 (ボラン・ブギー)※ベスト盤
1972年『The Slider』 (ザ・スライダー)
1973年『Tanx』 (タンクス)
1974年『Zinc Alloy And The Hidden Riders Of Tomorrow Or A Creamed Cage In August」 (ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー)
1974年『Light Of Love』
1975年『Bolan’s Zip Gun』 (ブギーのアイドル)
1976年『Futuristic Dragon 』(銀河系よりの使者)
1977年 『Dandy In The Underworld』 (地下世界のダンディー)
Track List
A1.Dandy In The Underworld、2.Crimson Moon、3.Universe、4.I’m A Fool For You, Girl、5.I Love To Boogie、6.Visions Of Domino
B1.Jason B. Sad、2.Groove A Little、3.The Soul Of My Suit、4.Hang-Ups、5.Pain And Love、6. Teen Riot Structure
personnel
Marc Bolan – vocals, guitar, bass guitar, percussion, maracas, tambourine、 Steve Harley – backing vocals、 Alfalpha – backing vocals、 Nick Laird-Clowes – backing vocals、 Andy Harley – backing vocals、 Sam Harley – backing vocals、Gloria Jones – backing vocals、 Colin Jacas – backing vocals、 Dino Dines – keyboards、 Tony Newman – drums、 Herbie Flowers – bass guitar、 Scott Edwards – bass guitar、 Paul Humphrey – drums、 Miller Anderson – guitar、 Steve Currie – bass guitar、 Davy Lutton – drums、B ernie Casey – backing vocals on “The Soul of My suit”、 Chris Mercer – saxophone、Bud Beadle – saxophone, flute、 J.B. Long – violin、
マーク・ボラン率いるT・REXが77年に発表した(ティラノザウルス・レックスから T・REXに改名してから数えると)通算8枚目にあたるスタジオ・アルバム。これはそのピクチャーディスク。曲名も盤面に克明に印字されている。このアルバムがリリースされて半年後にマーク・ボランは亡くなったため、遺作となった作品である。生前から「僕は30歳まで生きられないだろう」と彼が語っていたのは有名な話。内縁の妻グロリア・ジョーンズが運転する車に同乗。事故により大破したのは30歳の誕生日を2週間後に控えた日のことだった。
さて、本作が発売された77年といえば、イギリス本国ではパンク・ムーブメントが吹き荒れていたその真っ只中。マーク・ボランは以前のツアーの前座に、3大パンク・バンドの1つ、 THE DAMNEDを起用したこともあるほどこの新しい音楽、パンク・ロックにぞっこんで、そういった部分では柔軟なマインドを持っていた人といえる。そこで、そのパンク・ロックが本作に何かしらパンク的な影響を与えているかというと、そういう影はほとんど感じられず、いつものボラン節が展開されるのである。
T・REXは、ロカビリーやブルースに典型的な3コード進行(それ以上にブリッジ、ブレイクを加えて転調する、というパターンはあまり見かけない)があり、リフの組み立て方やメロディも、ルーツミュージックから大きく逸脱はしない、ただ使用する楽器の音色や重ね方がこのバンド特有の雰囲気をもたらしている。これだけ沢山の楽器を重ねていても、整合感のある仕上がりにするところが凄いところだと思う。
Side A
A1.Dandy In The Underworld
オープニング・ナンバーとしては意外ともいえる、R&B風のバラード。歪んだロング・トーンの低音のギター、荘厳なストリングス、12弦ギター、凝ったコーラス・ワークが織りなすメランコリックなナンバー。耳に残るメロディで、何度聴いても飽きない。
2.Crimson Moon
ボラン・ブギー全開、オクターブ違いのダブル・トラックのヴォーカル、控えめなフェンダー・ローズだが、これが良く効いていて、ファンキーさが増幅されていて味わい深い仕上がりになっている。
3.Universe
タメの利いたベースと小刻みなギターから成るミディアム・テンポの16ビート・ナンバーで、ボランのヴォーカルがキュートな1曲。ブルージーなオルガンとスペーシーなシンセサイザーも加わり、3コードのシンプルな楽曲ながら、賑やかな独特のサウンドに仕上がっている。
4.I’m A Fool For You, Girl
こちらもミディアムのファンク・チューン。ボランのヴォーカルと呼応するキーボードが上手く機能したキャッチーな1曲。意外にもJ.Bロングの枯れたヴァイオリンがハマっており、この独特な曲を一層魅力的なものにしている。
5.I Love To Boogie
ここまでの楽曲群と趣を変えて、ここではドラム、ベース、ギター、鍵盤の極々シンプルな演奏、ヴォーカル、ギターのオーバー・ダブも最小限。こういうのが1曲あるとメリハリが生まれて良い効果。音数少なめなのがかえってオンリー・ワンのボランの声を引き立てている。
6.Visions Of Domino
シャッフル調のハネたリズム、アッパーなブギー・ナンバー。リズム隊のタイトな演奏が小気味良い。オーソドックスなブギー・ソングながら、ストリングスが有機的に曲を覆い、華麗なブギーに変貌を遂げている。
Side B
B1.Jason B. Sad
“ゲット・イット・オン“タイプのナンバー。適度につぶれたツイン・ギターと低音のサックスのリフが実にグルービー。クルクルと表情が変わるボランのヴォーカルも聴きどころ。
2.Groove A Little
シンプルなミディアム・ナンバーながら、なんとも言えない奥行きのある印象を受ける。各楽器の絡みが緻密に計算されて、懐の深さを見せつけられるような心憎い演奏である。
3.The Soul Of My Suit
変則的な8ビートのロッキン・チューン。メロディアスなベースが聴きもの。
4.Hang-Ups
耳に残るキャッチーなリフのロッキン・チューン。ツイン・ギターとベースがほぼユニゾンで進み、そのグッと抑えた、重み、厚みのあるサウンドが非常にカッコ良い。
5.Pain And Love
ドラムの響きとストリングスが荘厳な印象を与えるスロー・ナンバー。この曲でのボランのヴォーカルも、多彩な声色で楽しませてくれる。
6. Teen Riot Structure
ベースとドラムのリズム隊が実に躍動的なアッパーなロッキン・チューン。ちょっと悲しげなグッとくるメロディのクロージング・ナンバーをボランはエネルギッシュにイキイキと歌い上げている。
ロッコ :本ブログVINYL DIARY(ビニール・ダイアリー)主催。レコードのことをビニール(又はヴァイナル)と呼ぶことから、この名称に。これまで少しずつ収集してきたロック、ジャズのアナログ盤、CDのレヴューを細く永く日記のように綴っていきたいと思っている。 またH・ペレットの雅号で画家としての顔も持つ(過去、絵画コンクールにて複数回の入選、受賞歴あり)ここ最近は主にミュージシャンの絵を描いている。(ジョニー・サンダース、キース・リチャーズ、トム・ウェイツ、他)絵画に興味ある方はご覧ください。