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書籍 クートラスの思い出(岸 真理子モリア著)

どんな分野にでも言えることだと思うのだが、世の中には知られざる偉人というのが沢山いて、ここで紹介するロベールクートラス(フランス、’85没)という画家もまさにその1人だと思う。

クートラスは画廊と契約して作品作りをしていた若い頃は、ユトリロやビュッフェの再来と呼ばれるほどの腕前で売れっ子の画家だった。(画家になるまでも逸話が沢山あるのだが、ここでは割愛する)

お金になるのはありがたいことだったが、量産を迫る画廊との縛りに嫌気がさし、契約を解除。また別の画廊と契約、そして解除、という負の連鎖の中で長い間もがき続ける。(このくだりは僕のこれまでの美容師人生と重なって苦笑してしまった)

そうしているうちに身体も悪くし、お金もなくなる。キャンバスが買えなくなり、ポスターやチラシの裏側など無料のモノ、拾ったモノを使ってなんとか作品作りだけは続けていく。

ある時から段ボールをトランプのカードくらいにカットし、これに彩色する、そんなことを始めた。これを名付けて”カルト”という。最初は友人の画家にも理解されなかったわけだが、これが今現在も色褪せない、クートラスが作って(発明して)その名を知らしめた一つのイコンである。

これがカルト。アクリルなどで下地を厚く塗って、何度も筆を入れ、ある時は踏みつけたり引っ掻いたり、夜露に晒して経年変化の要素を加えたり。時間と手間をかけて一晩に一枚のペースで作る。

この色合いの美しさはなんだ!というのが僕がこれを見た最初の印象だ。(実物は未見)この創造力と想像力。生命力に満ち溢れた感じは、発明以外の何物でもないと思った。

この本購入のきっかけは、どんな画家がどんな経緯でこんな風変わりなカッコいいモノを作ったのか?が知りたかったからだった。

著者の岸 真理子モリアさんはクートラスの最後の恋人だった人。この方の日常生活を描く情景描写が詩のように美しく、まるで映画でも観ているように場面が目に浮かぶ。クートラスと過ごした日々のことももちろん丁寧に綴られている。

本の前半にはカラーでカルト、その他の絵画作品が載せてあり、中盤以降は貴重な未発表デッサンもかなりのページをさいて掲載してある。クートラスの写真もところどころに。巻末に年表。それから、この本の紙の質感が触り心地がとても良い。

購入してから数年経つけど、未だにたまに引っ張り出して読んでしまう。そしてその度ごとに新たな感動を与えてくれる、とても美しい一冊。

クートラスの思い出/岸 真理子モリア/(株)リトルモア

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